【連載】ウクライナ 失われた正義
5年目に入ったウクライナ侵攻。ロシアによる侵攻前から長年にわたって取材を続けてきた記者が再びウクライナへ。多くの命が奪われた社会で暮らす人々の言葉から「正義」とは何か考えます。
1月の夕方、私はウクライナの首都キーウの繁華街にあるショッピングセンターで、18歳の若者と待ち合わせをした。日中、何度も空襲警報が繰り返された日だった。
若者の名前はロマンさん。ロシア軍に占領された東部ドネツク州のマリウポリを脱出し、2週間前にキーウに着いたばかりという。
ロマンさんは人通りの多さに不慣れな様子でやって来た。最上階のカフェでラーメンを注文し、うつむいてぽつりぽつりと話し始めた。
マリウポリはアゾフ海に面する港湾都市だ。2022年2月24日の侵攻初日から85日間にわたってロシア軍に包囲され、徹底的に破壊された。ロマンさんが住んでいたのは、最も早くロシア軍に制圧された地区の一つだった。
迫る治安機関 間一髪脱出
当時は14歳。侵攻から5日目、食料を探して外に出て激しい砲撃に遭い、自宅にいた母と離れ離れになった。ロシア軍に連行され、さまざまな場所を転々とさせられたあと、ほかの子供たちと一緒に郊外の学校で暮らすよう強要された。
夏には解放され、母の無事も…
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