自民党総裁選で「保守」という言葉が飛び交っている。「私は穏健保守」、「自民党は保守政党」……。我こそが保守だと競うのはなぜなのか。そもそも保守とは何か。戦後日本の保守思想に詳しい中島岳志・東京科学大学教授に聞いた。
――多くの候補者が「保守」を語るこの総裁選をどう見ているか。
この言葉が何を指しているのかわからないまま、みんなが保守、保守と言い始めている。保守のインフレ状態。政治における保守とは何か、定義づけが必要な時期だと思っている。
人間を過信しないからこそ伝統や慣習を重んじる
――政治における「保守」とは。
フランス革命に反対する立場の人たちから生まれた近代的な政治の流れであり、その原点は(英国の思想家の)エドマンド・バークだ。
バークの指摘は保守主義の定義として重要な意味を持つ。左派や啓蒙(けいもう)主義者たちは、世界の設計図を描き、革命によってこれを実現すれば世界はよくなると言うが、それは人間の理性や知性への過信、思い上がりではないか。どんなに頭がいい人でも、理性にはほころびがあり、エゴイズムや、やっかみがぬぐいきれない。歴史の風雪に耐えて残された良識、社会的な経験値、暗黙知。それが形となったものが伝統や慣習である。
保守はこれらを重んじるが全く変えないということはない。漸進的な改革、永遠の微調整をしていく。これが保守だ。
――自民党は保守政党か。
違う意見にも耳を傾け、落としどころを探るのが保守政治家だった。(元首相の)大平正芳さんが「政治は60点」と語ったが、どんな人でも間違うから40%の余白を残す。これが保守の態度。
むしろこの十数年間の自公政権は、保守の重要な部分を失ったのではないだろうか。
「価値とリスクのマトリクス」に政治家を位置づけると
――リベラルは保守と対立するのか。
リベラルの対義語はパターナ…
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