
投資は「プロ」と「時間」を味方に!
「投資は難しい…」。START!読者の中にはそのように思っている方が結構多いのではないでしょうか。いつ始めるべきか、何をしたらいいのか…。投資を始める前から迷ったり、考えあぐねて踏み出せなかったり、さまざまな悩みを抱えているという声をよく聞きます。
わからないことはプロに聞くのが一番。今回は三井住友トラスト・アセットマネジメントの平木秀樹取締役社長に、投資や投資信託についてどう考えればよいのか、やさしく解説して頂きました。
投資信託 1万円からOK
まず投資について広く考えてみましょう。一つの株とか、少数の銘柄に集中して投資していると、上がり調子のときはよいのですが、風向きが逆になると大きく下がってしまい驚くことがあります。それを和らげるためにはどうしたらいいでしょうか。
一番わかりやすいのは、銘柄を分散していろいろな組み合わせで買うことです。個々の銘柄の価格の動きは様々ですので、組み合わせにすれば、一方向に大きく変動することは避けられるかもしれません。個人の方が資産を形成する上では、そのほうが安定的でよいのではないか。そう考えるのが「分散投資」です。
しかし、個人の方がさまざまな金融商品を一つ一つ買って資産を分散するのは大変です。手間も時間も所要資金もかかります。包装紙にくるんだり、一つの箱の中に入れたり、小分けにしたパッケージのようなものがあれば、わかりやすいし効率もよいのではないでしょうか。そういう商品を買いたいという方から資金を集めてファンドという形にしたのが、投資信託の原型です。
この仕組みを使えば、少額からさまざまなものに投資することができます。日本国内だけでなく、海外の株式か不動産投資信託とかにも広く投資することができます。投資信託は1万円から買えるものも多く出ていますので、個人の方がコンスタントに資産形成に取り組んでいくのによく利用される一般的な商品ですし、画期的な仕組みでもあると考えます。
種類はざっくり2種類
つづいては投資信託の種類についてお話しします。こちらは大きく二つに分かれます。一つ目は、日経平均やニューヨークダウなどの指数に沿って運用する「インデックスファンド」です。こちらはコストが相対的に低いのが売りです。もう一つは、それらの指数に対して上回ることを目標とする「アクティブファンド」です。平均よりも上がりそうな銘柄にウエートをかけた組み合わせをつくって運用します。こちらは運用するのにスキルが必要ですので、コストが相対的に高くなります。
5年、10年という時間軸でみた場合は、指数に勝てるアクティブファンドは3割くらいしかないと言われています。毎年安定してよい結果を残せる商品は意外に多くないのです。そのため、アクティブファンドを選ぶ場合には、その3割をどうやって見つけるかがとても大事になってきます。商品特性に加えて、運用体制や情報提供の量や質、過去のパフォーマンスなどを比較検討することが必要になってきます。

投資信託はアナリストやファンドマネジャーなどさまざまな役割を持つ人が集まり、チームで運用されています。アナリストは個別銘柄の調査を主に行い、ファンドマネジャーはそれを業種横断的に横軸で比較し、より良いパフォーマンスが出る組み合わせを作っていきます。マーケットの上昇局面ではさらに結果が出るように、下降局面ではマイナスをいかに抑えられるか、ファンドマネジャーのスキルと決断力が問われます。若いときから自分の責任でポジションを持たせて判断させる。そのような人材が多い運用会社は、信頼も結果も得ることができると考えています。
「長期」がいい 「短期」は困難
つぎは投資の期間について考えてみます。まず、投資はできるだけ長期で考えて頂いた方がよいと思います。期間が短くなればなるほど、投資は難しくなってくるからです。どんなプロの投資家でも、1日あるいは1週間で必ずリターンをあげなさいというと非常に厳しいです。
長期で投資を考えるためには、一番最初の入り口の判断が最も重要になってきます。どの地域の、どの資産を、どういった運用会社の商品から選ぶのか、じっくり検討することをおすすめします。なぜなら、そのトータルが将来のリターンに反映してくるからです。時間的に余裕のある資金をお持ちの方は、できるだけ長期で運用することをおすすめします。「時間を味方につける」ことは、投資にとってとても重要なことです。
一方、教育費やローンの返済など期限のあるお金を運用したい方は、預金のウエイトを高めておいたほうがよいと思います。たとえば3年後に子どもが大学に行くとなると、受験料や学費などまとまったお金が必要になりますよね。預貯金でカバーできないとなると、投資信託を解約しないといけません。お金が必要になるタイミングで、必ずしも高い価格で解約できるかどうかはわかりません。そのような方は「卵を一つのかごに入れるな」という投資の格言通り、お金を分散しておくとよいと思います。
個人の方のリスク許容度は、同じ年齢、同じ年収でも大きく異なります。家族構成や持ち家の有無など、まさに千差万別です。将来を見据えて、どうやって資産形成していくべきか。人生のゴール、目標は何か。われわれ運用会社の経営者や人材は、AIの利点を活かしつつも、それでは代替できないような細かいニーズを拾って、商品やサービスを提供していかなければいけないと感じています。