
「ポイント投資」で資産運用体験
クレジットカードの利用やネット通販での購入などで貯めたポイントを使って、投資を体験できるサービスが最近増えています。10月には、「Tポイント」のカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)がネット証券大手のSBI証券と提携して、Tポイントで金融商品を買えるサービスを来春以降に始めると発表しました。ポイントを使えば、気軽に投資体験ができるのがメリットですよね。使えるポイントや、各社のサービスの特徴についてまとめました。
ポイント投資には、大きく分けて2種類の方法があります。一つは、お金の代わりにポイントを使って投資信託などの金融商品を購入し、実際に運用するタイプ。この場合は、通常の投資と同様に証券口座を開設する必要があります。もう一つは、金融商品の値動きに連動してポイントが増減するタイプで、投資を疑似体験できるのが特徴です。
「dポイント」で投資を疑似体験
NTTドコモが今年5月に始めた「dポイント投資」は、手持ちのdポイントから振り分けた「運用ポイント」が、提携先の「お金のデザイン」が運用する投資信託の値動きに連動して増減する仕組みです。変動する幅は、高いリターンを目指すアクティブコースと、安定重視のバランスコースから選ぶことができます。
約6700万人のユーザーを抱えるdポイントだけあって、サービス開始から半年足らずでポイント投資を始めた人は30万人を超えました。NTTドコモFinTech推進室の笠七菜実さんは、「投資に関心をもっていても、始める手前で躊躇している人が多い。ポイントなら(証券口座の開設に必要な)身分証の提示なども不要で手軽に始められるので、まずはやってみて、投資を身近に感じてほしい」と話します。

ポイント投資で手応えをつかんだ人に向けて、最低1万円から運用できる資産運用サービス「THEO+docomo(テオプラスドコモ)」も用意されています。こちらも「お金のデザイン」が提供するサービスで、ロボアドバイザーが約6000種類の上場投資信託(ETF)から自動で商品を選んで運用してくれます。また、ドコモのクレジットカード「dカード」で決済した支払いの端数を運用にまわす「おつり積立」の機能もあります。
笠さんの上司で、個人投資家歴20年の木村圭介・FinTech担当課長は、「世界の動きや運用のコツなど、投資を始めてみると気づくことが必ずあります。始めるハードルをギリギリまで下げて、『貯蓄から投資へ』という社会課題の解決にも貢献していきたい」と話しました。
「楽天スーパーポイント」で初めての投資信託、約3倍に
ポイント投資を入り口に投資信託の購入者数を増やしているのが、楽天証券です。2017年8月から、楽天市場や楽天カードなどの利用でたまる「楽天スーパーポイント」で投資信託を購入できるようにしたところ、投資信託を初めて購入する人が1年間で約3倍に急増。同社によると、今年3月末時点で、投資信託の購入者全体の約4割がポイントを使って初めて購入した人でした。

楽天証券は他社にさきがけて投資信託の最低購入額を100円まで下げたほか、毎月一定額を買い足す投資信託の積み立てにもポイント利用の対象を拡大するなど、投資未経験者の呼び込みに積極的です。その理由を広報の中川望さんは次のように話します。
「楽天IDの登録数は1億以上ありますが、楽天証券の口座数は300万にとどまります。銀行や保険と比べても、証券は本当にハードルが高い。『投資するにはたくさんお金が必要』というイメージを壊して、グループ内でもっと利用者を広げられるよう強化しています」
ポイント投資の元祖は「永久不滅ポイント」
業界を問わず広がるポイント投資ですが、そのさきがけは、クレジットカード会社のクレディセゾンです。カード利用でたまる「永久不滅ポイント」が、関連会社が運用する投資信託に連動して増減するポイント運用サービスを2016年12月に開始。dポイントと同様に、投資の疑似体験ができるサービスで、利用者数は10月に30万人を突破しました。運用ポイントは約11億円相当にまで拡大しています(1ポイント=5円換算)。

どんなきっかけで、ポイント運用のサービスが生まれたのでしょうか。
「ポイントに目を向けてもらうための、カードユーザーの活性化が狙いでした」と、同社のアセット・マネジメント・ビジネス・オフィサーの美好琢磨さんは話します。永久不滅ポイントはその名の通り、ポイントが永久に消えないのが特色。そのため、ポイントがたまり続ける利用者が多く、「せっかくなら楽しい使い道を」と考えたのが投資体験でした。
他社が同様のサービスを始めたことなどで、ポイント運用の利用者数はこの1年で急増。昨年9月の7万2000人から、今年10月には33万人にまで拡大しました。そこで、今年9月には「アクティブ」「バランス」などの4コースに加えて、実在する企業の株価と連動させる「株式コース」を新たに始めました。こちらはポイント運用サービスのSTOCK POINTと連携し、対象銘柄は利用者アンケートで選ばれたカルビー、日清食品ホールディングス、ホンダの3社を用意しました。

意外な発見もあったといいます。当初、同社ではバランスコースが最も選ばれると予測していたところ、始めてみると値動きの大きいアクティブコースがダントツで人気だったそう。美好さんは、「ポイントって、おまけだから、増えたらうれしいけど、減っても仕方ないと思える。バーチャルすぎると投資を自分事にできないけど、ポイントだと絶妙な立ち位置で投資を体験できるのだと思います」と、利用者が増えている理由を話しました。
ポイント投資をきっかけに、資産運用に本格的に乗り出す人は増えるのでしょうか。各社の新しい取り組みに、引き続き注目していきたいと思います。