
SDGsで世界を見るVol.1
2030年までの国際目標、SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)。SDGsが定める17項目の6番目には「安全な水とトイレを世界中に」とあり、すべての人に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保することを目標にしています。
ユニセフとWHOが2017年に発表した内容によると、世界では約21億人が安全に管理された飲み水を手に入れることができないそうです。水問題の解決は人々の命を救うだけでなく、教育水準の向上や経済発展にもつながると考えられています。今回は10月に東京・八重洲で開かれた「水を安全に変える、世界初の新素材」に関する記者発表をSTART!編集部が取材しました。
結晶=クリスタルで短時間の浄水
新素材を共同研究開発したのは、長野県の信州大学と住宅設備機器メーカーの「トクラス」(本社:浜松市)です。2007年から同大学工学部の手嶋・是津研究室とヤマハ発動機アクア環境部(現・トクラス)で、結晶を作る技術をベースにした水の浄化材料の研究を始めました。研究を始めた背景には、日本の水道管の老朽化問題があると手嶋勝弥教授(信州大学環境・エネルギー材料科学研究所長)は話します。
古くなった水道管からは、管を作る素材に使われる鉄さびや鉛などが水に溶け出ることがあります。これらは人体に悪影響を及ぼす可能性が高いとされています。しかし、これらの重金属を除去し浄水するためには、どうしても時間がかかり、かつ大型の設備が必要になるという課題がありました。
手嶋教授とトクラスが研究を進める結晶育成技術「フラックス法」を用いると、板状の結晶が何重にも重なったミルフィーユ状の構造を作ることができました。この新素材「三チタン酸ナトリウム(Na2 Ti3 O7)」の結晶を使うと、浄水の際に水に触れる面積が大きくなり、短時間でさまざまな重金属を取り除くことができます。さらにミネラルなど水のおいしさを含む成分はほほ吸収されないとのこと。手軽に安全でおいしい水に変えることに成功しました。
フラックス法で作られた結晶材料は『信大クリスタル』と名づけられました。信大クリスタルは浄水だけでなく、次世代電気自動車の電池などにも応用できる可能性があると手嶋教授は話します。
エコで安全な水分補給を
トクラスは12月25日に、この新素材を活用した携帯型浄水ボトル「NaTiO(ナティオ)」を発売します。水道水をボトルに入れて、紅茶やコーヒーをつくるフレンチプレスのように上から押すだけで簡単に浄水できる仕組みを採用。カートリッジに搭載された「信大クリスタル」を水が通ることによって、水道水に含まれる残留塩素や鉛を除去できるとのことです。
浄水カートリッジは交換式で、1つのカートリッジで約360回繰り返し使えるそうです。トクラスの上川秀哉副部長は「軽くて持ち運びに便利なので、学校に水筒を持っていく子どもたちなどに使ってほしい」と期待を込めて話します。
手嶋教授は「ペットボトルの使用を減らすことにつながり、環境にもやさしい技術・製品になったと思います。これからはティーバッグなどを使ってより安価な浄水技術を研究し、さまざまな国に広めていくことでSDGsに貢献していければ」と話しました。
普通の水を安全においしく変える。そんな信州発の技術が未来を変える可能性をこの記者会見から感じました。


































































