オリジンから多角的に考える

「アートシンキング」のすすめ

START!編集部

現代は将来が見通しづらいVUCA(*)の時代といわれています。
そんな中で仕事や生き方をどう考えていけばよいか、迷ったり行き詰まったりする方も多いと思います。

今回は「アートシンキング」で企業や個人を変えつづける株式会社Bulldozer代表取締役の尾和恵美加さんに、アートな視点や考え方について話を聞きました。

*Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)

―――アートシンキングって言葉を最近よく聞くようになりました。まずそもそもアートとはいったい何でしょうか?

尾和恵美加さん:アートというと絵や彫刻などの美術作品を思い浮かべる方が多いと思います。私は自分のオリジン、原体験をたどっていって表現する行為そのものがアートだと思います。

―――その人の育った環境とか境遇とかがオリジンの第一歩ですか。

尾和:そうですね。自分が生まれてから今まではもちろんのこと、どういう地域で、どんな気候のもとで、どのような意思決定をしてきたのか。さらには育った国の地形や地理、宗教、文化、気候など、どれだけマクロな視点で長い時間軸を考えられるのか。なぜ、今この場所でこの時の流れの中で自分がこれをつくっているのか。ここまで説明できると、本物のアート/アーティストではないでしょうか。

―――とすると、形だけではアートとは呼べないものもありますか。

尾和:見た目はアートっぽくてもそうじゃないものはたくさんあると思います。オリジンから出てきたアイディアや思想をどんどん発展させて、その最終形がアートになるわけですから、その深さやそこに至るまでの過程がすごく大事だと思います。オリジンが語れること、哲学があること、これがアートなのだと考えます。

―――ビジネスにおいてもアートは活用できますか。

尾和:はい。私が構築したものはアートシンキングの中でも「オリジンベースド・アートシンキング」というものです。この考え方を使って、プロダクトアウト型で物やサービスを作っていけば、その人やその会社にしか出せない価値が提供できると思います。それは代替できない、まねすることのできない、盗めないものだと考えます。アーティスト的な0→1の思考を、ビジネスサイドに移植してイノベーションを起こせるのが、オリジンベースド・アートシンキングです。

―――具体的にどうしていけばいいのでしょうか。

尾和:ある会社の新規事業開発をテーマにした事例を紹介します。いま自分たちがこの会社にいるからこそ作れるものはなにか。まずはチームビルディングから始めました。チームメンバーお互いのオリジンをしっかり共有して、オリジンの交わるところを見つけます。さらに創業当時からの会社の歴史もしっかり振りかえり、会社のオリジンとは何だったか考えました。最後にその2つが交わるところを見つけて、そこに私が入って議論を深め、実際にアーティストに依頼して、具体的な言葉を絵として抽象的に表現してもらい、その絵を元に対話を深めていきました。

―――面白いですね。

尾和:このオリジンみたいなものを抽出して、新規事業を模索するほかにも、社の行動指針とか中期経営計画に入れるのもよいですし。さらには行動に移すための具体的なアクションプランに入れ込むことも考えられます。そうすると会社や組織が求めるカルチャーや方向性により近づいていくのかなと思います。社是とか経営理念ってなんか上のほうから降りてくるイメージですが、アートシンキングでみんなのオリジンを詰め込むことができれば、主体性や自分ごと感も生まれてきまし、さらにそこへ仕事への楽しみも生まれるのかなと考えます。

―――大企業や大きい組織ではどのように活用できますか。

尾和:特定の部署や特定の仕事を担う小さなかたまりまで落とし込むと、オリジンはまた変わったものになると考えます。会社の中のこの部門でこれをやっているという目線でオリジンを考えると、かなりすっきりした行動指針が出てくることが多いです。そこには自分たちのオリジンも含まれているので、自分ゴト化しやすく、チームビルディングの活性化や主体性の強化が期待できます。

―――デザインシンキングとはどう違いますか。

尾和:デザインとアートの違いから考えてみるとわかりやすいです。デザインとはユーザー起点で始まるもので、ユーザーのニーズを満たさない要素は”引き算”されていきます。一方でアートとは、自分起点で始まるもので、自分のオリジンに基づき個性を”足し算”していくものです。引き算は母体がないとできませんから、0→1で何かを作るフェーズではアートシンキング、1→10でブラッシュアップするフェーズではデザインシンキングが有効だと考えます。

―――すごく現代向きだと思います。

尾和:市場のニーズやユーザー視点に立つことはとても重要ですが、いまはマーケットの状況が変わるのがものすごく早くなっていますよね。製品やサービスのサイクルや賞味期限も短くて、揺らぎやすい。さらにはすぐコモディティー化しがちです。そのなかで本当につくりたかったもの、自分たちにしかできないことをアートシンキングで見つけることは、「ぶれない」「唯一無二」なものを作れるきっかけになると思います。

―――やりたいことや取り組みたいことが見つかったら、どうやって考えを深めていけばいいですか。

尾和:芸術家たちの思考の深め方はここでも参考になると思います。たとえば表現したものを切り取って向きを変えてみたり、切り刻んで分解してみたりと物理的に手を使って動かして思考を進めていきます。手と頭と心、3つ同時に動くような時間をいっぱいつくると、もっともっと深く思考できるかと思います。ワークショップなどで実施にやってみると、結構効果があるように思えます。

尾和さんのマインドマップ

―――グローバル化のなかで、日本企業や日本人にも役立ちそうです。

尾和:日本語は言葉の余白や文脈というあいまいなものを大事にする言語なので、アートシンキングと相性がすごくいいと思います。うまくアートシンキングを使いこなすことができれば、違う価値観を良しとして受け入れ、日本から世界へ発信していく一助になるはずだと思います。新しいビジネスパーソンのOSみたいなかたちになるといいですね。

―――ありがとうございました。

尾和さんによると、欧州では「IKIGAI」(生きがい)という言葉がかなり流行しているそうです。その人ならではの価値観、生きがいというものが、これからのVUCAの時代に改めて注目されてくる。そんな気づきを与えてくれたインタビューでした。

尾和恵美加さん:株式会社Bulldozer代表取締役。Twitterは@emiwatson1

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