
CMでおなじみ西村社長が考えるWiFiの未来
ゴールデンウイーク、みなさんはどのように過ごされましたか。
海外旅行をして、WiFiがないと不便だなあと感じた方もいるのではないでしょうか。『海外行くなら、イモトのWiFi~』と八代亜紀さんが歌うCMでおなじみの、エクスコムグローバル西村誠司社長にWiFiのこれまでとこれからについて聞きました。
――いつごろ海外でのインターネットサービスを始められたのでしょうか。
もともと弊社は海外用携帯電話のレンタルサービスを提供していました。2008年ごろ、とある海外企業の社長と会食をしていたときに「これからは音声じゃなくてデータがメーンになってくる。音声はアプリでやりとりするようになる」と言われました。調べてみると、陸続きのヨーロッパでは国境をまたいでも使えるような携帯が普通で、それが驚くほど安い金額でサービスが提供されていることがわかりました。経営者の感覚として、海外のデータ回線をバルク買いして日本でリセールすれば大きなビジネスになるのでは思い、2008年6月にサービス提供を始めました。
――最初から個人旅行者向けのポケットWiFiだったのでしょうか。
サービス開始当初は、仕事で海外に行く人向けが中心でした。そのころはまだポケットWiFiがなく、USBスティックをノートパソコンに挿して使うタイプでした。2010年ごろに小型のルーターが出はじめまして、一番大きなターニングポイントは2012年です。iPhoneをはじめとするスマホの普及と、フェイスブックやツイッターなどSNSが爆発的に広まっていきました。それまでは海外にいるときくらいは日本とつながりたくない、シャットアウトされたいという人が非常に多かったのですが、流れが一気に変わりました。
――具体的にはどういう使われ方をしたのでしょうか。
旅とSNSはとても親和性があります。出発の空港でパシャと撮影して、すぐあげる。到着しても、すぐ撮影。移動しても、ご飯食べても、みんな写真を撮ってあげるわけです。そこに対してすぐ「いいね」やコメントがついて、旅をしながらも日本にいる人とインタラクティブなやりとりをするようになりました。そのようにリアルタイムでつながっていくためには、WiFiが必要だねとなったのです。
――そこから個人向けを強化していったわけですね。
そうですね。BtoBでの利用が多かったので、それまでマスメディアでの広告はほとんどやっていませんでした。前述の通り、個人の普及期に入ったなと思ったので、2013年にタレントのイモトアヤコさんを起用し、サービス名自体を「イモトのWiFi」としました。名前を変えることには、僕以外の役員全員が反対したんですが、社長の権限で突破しました(笑)。

――どのようなシーンで使われるのでしょうか
旅行に行く前に空港で借りる人もいますし、事前に申し込みいただいて自宅に宅配するという方もいらっしゃいます。特に、事前予約なしでその場で借りる方もかなり増えています。もちろん、国によって周波数やバンドは異なるのですが、最近では同じ端末でつながるような仕組みを開発し、幅広く対応できるようになりました。海外のローミングネットワークもかなり整備が進んできたので、渡航先でWiFiが全く使えないという国はほとんどないと思います。
――課題はどういうところですか。
いま弊社では、アジアで1日680円というプランからラインナップを用意しています。以前は1580円、1780円という価格帯で提供していましたので、だいぶ安くなったのではないかと思います。しかし、ご利用いただく方の意見を踏まえると、もう一段の価格の下げが必要だと思っています。
――目指すところはどれくらいの価格なのでしょうか。
1日280円を狙いたいと思っています。3人で割ると1人が1日100円未満。これはだいぶ値ごろだと思われるんじゃないでしょうか。ただ、いまのイモトのWiFiブランドでやるというよりは、セカンドブランドにして、エントリー層にターゲットをしぼって提供することになると思います。飛行機にLCCがあるように、ポケットWiFiも顧客層を広げるために敷居を下げてもいいのではないかと考えています。
――海外で無料WiFiだけを使っている人は結構いますか。
まだまだいらっしゃいますね。でも、せっかく旅に行っているのにWiFiスポットを探す時間はもったいないですよね。もちろん、1日680円がまだ高いなあと思われる方がいるのも事実だと思います。その感覚も非常によく理解できます。まずはポケットWiFiを使ってもらえる格安のプランを始めたいです。一度使ってもらえば、とても便利だということが十分わかって頂けるのではと確信しています。

――最近の傾向を教えてください。
シニア層の利用が増えてきています。われわれがCMの曲で八代亜紀さんを起用したのも、そこを意識しているんです。以前だったらあまり見かけなかった年配の方が申し込みをして頂ける、と空港カウンターのスタッフからリポートが上がってきていました。たしかに年配の方がLINEやSNSを使いこなす割合は年々増えています。そこにうまく届かせるためには、昭和のムード歌謡かなと。
――2020年に向けたインバウンドの旅行者はどうでしょうか。
海外の方は旅行先に応じてSIMカードを現地で買って、入れ替えるケースが一般的です。私はポケットWiFiのようなルーターとSIM、どちらがすぐれているとかではなくて、これは文化の違いなんだと認識しています。当初は日本国内で使えるポケットWiFiをレンタルしていたのですが、やはりSIMカードの方が圧倒的に使われるということがわかりました。
――国内のWiFiスポットの見通しを教えてください。
ここ数年でだいぶ増えてきたと思います。ただそれでも満足度が低いということも同時に言われています。それは、ユーザー側がどこでもつながりたいとか、つながるのが当たり前と思うようになってきたからではないでしょうか。いまのWiFiがカバーする密度がたとえ倍になったとしても、完璧に「面で」WiFiが入ることはなかなか現実的ではないと思います。
――改めて今後の見通しを教えてください。
繰り返しになりますが、さらなる低価格化が進むと思っています。海外でWiFiがあると便利だと思っていても、価格面で二の足を踏んでいる方。この方々にぜひ使っていただけるよう、今年の夏ぐらいから新たなサービスを始める予定です。この分野でリーディングカンパニーになりたいです。もっとさまざまなお客様の役に立てると思っています。
――ありがとうございました。