
お金に縁のある人は、常に相手の目線で物事を考える人
世の中には「お金持ち」になるための情報があふれています。しかし、お金に関する知識をいくら詰め込んでも、そう簡単にお金持ちになれるわけではありません。お金持ちになるためには、お金に関する知識に加えて、お金に関する「教養」を身に付けなければならないからです。
お金持ちになるために「教養」を身につける必要があると聞くと、ちょっと意外な感じを受けるかもしれません。ソクラテスを読んだり、難しい中国の古典を勉強したりしなければいけないの?と思った人もいるでしょう。ここで言うところの教養とは、いわゆるお勉強としての教養とはちょっと違います。
筆者がイメージするお金に関する教養というのは、お金に関する知識や、お金にまつわる自身の体験をうまく結び付け、お金に縁のある行動に落とし込むためのものです。いってみれば、お金に関する「知恵」といったらよいでしょうか。
実は、一般的な教養というものも、ただ歴史を暗記したり、哲学者の名前を覚えたりしただけでは教養とは言えません。これらの知識が総合的に生かされ、人格や行動に結びついて初めて、本当の意味での教養になります。
では、お金持ちになるためには、具体的にどんな教養を身につければよいのでしょうか。
一般的な教養と同じく、お金に関する教養も、分かりやすい形では存在していません。一見すると、すぐには役に立たないように思えるものも多いかもしれませんが、そこは急がば回れです。「チリも積もれば・・」と言いますが、これらが蓄積してくると、やがて大きな力となってくるでしょう。
筆者がお金に関する教養としてもっとも重視しているのは、人間をどう理解するのかということです。経済活動というのは、結局のところ、人と人のコミュニケーションの集大成です。人間に対する理解が深い人が、お金の面で有利に立てるのは、ある意味で当然の結果なのです。
お金に関する教養があり、お金に縁のある人は、常に相手の目線で物事を考えています。これに対して、お金に縁のない人はたいていの場合、思考回路が自分目線です。
ここで言う相手目線というのは、すべてを相手に合わせるという意味ではありません。相手がどんな人物で、何を望んでいるのかを、しっかりと理解できているということを意味しています。
筆者は数多くのお金持ちの人を見てきました。お金に縁のある人は、相手を喜ばせた方が自分にメリットが大きいと考えれば、迷わずにそう行動します。一方で、相手と付き合っていてもあまり意味がないと思えるなら、きっぱりと付き合いを清算してしまいます。つまりダラダラと人付き合いすることがないのです。
こうした判断ができるのは、相手をしっかりと理解しているからです。これは直接、お金とは関係しない話なのですが、お金持ちになれるかなれないかを分ける最大の要因であり、まさにお金の教養の根幹をなす部分なのです。

お金に関する教養ということで、ここでひとつの「格言」を紹介したいと思います。格言といっても、古典の世界で語り継がれているものではなく、筆者が勝手に作ったものなのですが、筆者なりに含蓄のある言葉だと思っているので、ぜひ聞いてください。
皆さんは幼い頃から、「自分が相手からされて嫌なことを、人にしてはいけない」を教えられてきたのではないかと思います。しかし、筆者は、この言葉は間違っていると感じています。筆者がお勧めしているのは、「相手が嫌がることを、人にしてはいけない」という言葉です。
自分がされて嫌なことを人にしてはいけない、という言葉の何が悪いのでしょうか。それは、自分が嫌なことは人も嫌なことである。あるいは、自分が嫌ではないことは、相手も嫌ではない、と無意識に考えてしまっているからです。同じような人たちばかりの同質社会であれば、こうした判断は何の問題もありません。
しかし、世の中には、様々考え方の人が存在しています。彼らとうまくコミュニケーションを取りながら、ビジネスや投資を進めていかなければなりません。経済のグローバル化によって、異なる考え方の人々とのコミュニケーションの機会は、さらに増加しています。こうした社会では、自分が嫌ではないからといって無頓着でいると、知らず知らずのうちに他人に嫌なことを強要してしまう危険性があるのです。これは、自身の経済活動にとって、大きなマイナスとなるでしょう。
お金持ちの人は、多くの人から好かれるイメージがありますが、彼らが特別にいい人なわけではありません。自分とは異なる相手のこともよく理解し、それに合わせて行動できるので評判がよく、経済的にも有利な立場に立つことができるのです。実はこうした感覚が、ビジネスや投資の世界で強力な武器となるのです。