お金を呼ぶ教養塾

リスクと年齢について

経済評論家加谷 珪一

お金を増やしていくためには、ある程度のリスクを取らなければなりません。投資におけるリターンは基本的にリスクに比例しますし、仕事やマイホームについてもほぼ同じと考えてよいでしょう。一般的に責任が重い仕事ほど年収も高くなりますし、マイホーム購入も投資のひとつですから、どのタイミングで決断するのかによってその後の経済状況は大きく変わります。

お金に困らない生活をしたいからといってむやみにリスクを取るのは本末転倒ですし、かといって、あまりにもリスクと無縁な生活をしているとなかなかお金は増えません。

筆者は、本気で資産形成を考えるのであれば、多少のリスクは取った方がよいと考えていますが、過度なリスクを取ることだけは避ける必要があります。では、ごく普通の人にとって、適度なリスクというのはどの程度のことを指すのでしょうか。

あらゆるマネー本や投資本に書いてあると思いますが、投資は余剰資金で行うというのは基本中の基本です。最悪の場合、お金がなくなってもゼロになるレベルにとどめておかないと、そこからの再起が難しくなります。借金をして投資することは基本的に御法度と思ってください。株式の信用取引やFX(外国為替証拠金取引)も立派な借金ですから、高い信用倍率での利用はやめた方がよいでしょう。

では、手持ち資金の範囲ということで考えた場合、どのくらいの金額までなら許容されるのでしょうか。

この話は、年収や貯蓄の額、年齢など人によって違ってきます。年収が高くて生活が地味な人であれば、毎年の稼ぎから多くの貯金を捻出することができます。年収の3割を貯金できるほどの余裕があれば、すでに貯蓄額もかなりの金額になっていると思われます。このような人は、思い切った投資をしてもまったく問題ありませんし、仮に失敗してもそれほど大きな影響はありません。

収入と支出の差額に余裕がない人の場合、貯金の額も少ないと考えられます。一定額の貯金がないとイザという時に対処ができなくなりますから、まずは貯金が先決であり、投資でリスクを取るのはその後からでしょう。

しかしながら、この話は年齢によっても変わってきます。20代あるいは30代であれば、仮に失敗してもまだ十分にやり直しができますし、転職でキャリアを変えることもそれほど難しいことではありません。

昔と違って今の時代は中高年でも転職できないということはなくなりつつありますが、基本的に中高年の場合には、それまでの職歴が重視されますから、よほど実績を上げた人でない限りは、好条件で新しい職種や業界に移ることは難しいと思われます。

※写真はイメージです。

一方、若年層の場合には、今後のポテンシャルで採用するという面もありますから、中高年と比較すると、キャリアの変更は容易です。

こうした事情を総合的に考えた場合、若い人は中高年と比較して仕事でも投資でも大きなリスクを取ってもよいという結論になります。筆者自身も若い時に転職と起業を経験していますし、投資も20代でスタートしましたから、若い時はそれなりのリスクを取りました。

異なるカルチャーを体験することは、その後のキャリアに大きなプラスとなりましたし、若い頃から投資経験が積めたことは、後になって大きな資産となりました。投資というのは、基本的に経験がモノを言う世界であり、場数を踏んだ人には絶対にかないません。

若い時から多くの失敗経験を積み重ねてきたからこそ、市場が大きく変動した時にも慌てずに対処ができ、資産を減らさずに済みました。その意味では、投資をスタートするのは若ければ若いほど良いということになると思います。

中高年以上の読者の方でも諦める必要はありません。若い人とまったく同じリスクは取れませんが、リスクのレベルをうまくコントロールすれば大丈夫です。若い人が投資で10のリスクを取れるのであれば、中高年は6~7、シニアは4~5という感覚でより安全性の高い投資対象を選択していけば良いでしょう。

当然、リスクが下がった分、リターンも少なくなりますが、ここで無理してリターンを追うと過度なリスクを背負うことになります。年齢が上がるにつれて、より安全な投資に切り換えていくという発想は常に忘れないでください。

もうひとつ重要なのは健康状態です。最終的に自身の健康がどうなるのかを予想することはできませんが、年齢を重ねた分だけ老いていくのは全員に共通する現実です。仕事でも投資でも同じですが、年齢が高くなると、以前とは同じように行動できなくなります。

ひとつの仕事をやり終えるまでに必要となる時間や、それにかかる肉体的な負担は、若い時にはあまり気にならなくても、中高年以上になると大きな影響を及ぼします。資産運用についても、若い時は精力的に取り組むことができますが、中高年になってからはそうとは限りません。中高年以上になれば、一定割合の人が基礎疾患を持つようになりますから、集中力などにも少しずつ影響を与えます。

人生設計を行う際には、将来も同じペースで物事に取り組めるとは考えず、年齢が上がるにつれて、余裕を持たせる工夫が必要となります。年齢が高くなった人は、過度なリスクを避けると同時に、できるだけ手間をかけずに投資できる対象を選んだ方が良いでしょう。

同じ株式投資でも、値動きが激しくなく、安定的に成長できる会社の方がベターです。毎日、株価や企業動向に注意を払う必要がある銘柄の場合、中高年以上にとっては不利に働きます。年齢が上がるにつれて徐々にリスクのレベルを落とし、できるだけシンプルなものにしていくというのが投資における基本路線です。

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