
お金に関する正反対の話をどう捉えればよいのか?
お金に対してケチケチしていては、お金持ちになれないという話をよく耳にします。一方で、お金を貯めようと思ったら、ドケチにならないとダメだという話もあります。どちらが本当でどちらがウソなのでしょうか。
お金の話という点では共通だが・・・
最初に答えを言ってしまうと、どちらの話も本当です。厳密に言うと2つの話はお金という部分では共通していますが、別々のテーマに関係したものであり、実は、違う話をしているのです。
お金をたくさん稼ぐためには、どうしても先行投資が必要となります。株式や不動産、会社といったリアルな投資先はもちろんのこと、自身のスキルアップや、人脈作りなど、あらゆることに対してお金が必要です。
スキルアップへの支出について躊躇(ちゅうちょ)していては学べるものも学べませんし、ビジネスを立ち上げるなら思い切った投資が必要です。他人とのコミュニケーションという意味でも、人脈を広げようと思った場合には、それなりの出費を覚悟する必要があるでしょう。
つまりケチケチしていてはお金持ちになれないという話は、貯金するといった話ではなく、人生において成功するためには、という話に置き換えれば分かりやすいでしょう。多少のお金を先行投資したとしても、その後に、より大きなリターンを得るという考え方です。
一方、ドケチにならないとお金が貯まらないというのは、文字通りそのままの意味で、貯金するためにはケチになる必要があるという話です。お金を貯められない人は、月にいくら貯金すると決めていても、何かの理由をつけてお金を使ってしまいます。気持ちが弱い人の場合、強制的に給料の中から天引きするくらいでなければ、お金を貯めるのは難しいでしょう。
この話は、大きく稼ぐというよりも、とにかく確実に貯金するにはどうすればよいのかというテーマですから、大きく稼ぐためにはケチケチしてはいけないという話には直接関係しないのです。では2つの話はバラバラで無関係なのかというと、必ずしもそうではありません。2つの話は水面下ではしっかりと結びついているのです。

まずは貯金が大事だが、貯金だけではダメ
大きくお金を稼ぐにはケチケチせずに先行投資することが重要だということは分かりましたが、先行投資するための資金はどうやって作ればよいのでしょうか。それはケチケチと貯金する以外に方法はありません。つまりケチケチと貯金するという方法は、稼ぐために投資をすることの前段階と捉えることが可能です。
整理すると、お金持ちになるためには、ケチを追求してまとまった貯金を作り、これを何らかの形で思い切って投資することによって有効活用するのがベストということになります。これによってケチと積極的な支出が結びつくのです。
ケチを追求してまとまったお金を作り出し、それを投資していくという手法は、実ははるか昔から資産形成の王道として知られています。
明治時代の学者で日比谷公園を設計したことでも知られる本多静六という人物がいるのですが、彼は学者としての仕事の傍ら、多数のマネー本を執筆しており、そのうちのいくつかはベストセラーになっています。本多氏が著作の中で説いているのが、給料の一定割合を強制的に貯金し、それを株式や不動産などに投資していくというやり方です。
本多氏の活躍以降、日本では100年にわたって無数のマネー本が出版されてきましたが、どの本を読んでも基本的な方法論にほとんど変化はありません。100年も前の人の著作に書かれていたやり方は、今でもまったく古くなっていないのです。
一生懸命、貯金に励んでいるのになかなか大きなお金にならないという人は、お金の有効活用が出来ていない可能性が高く、逆にお金が出ていくばかりでまったく貯まらないという人は、お金の有効活用以前に基本的な貯蓄が出来ていないと考えられます。
まとまった資金がなければ何も始まりませんから、順番としては、ケチになることが最優先ですが、ケチのままではいけません。ある程度の資金ができたら、それを有効活用することを考えないと、小銭を貯めるだけで終わってしまいます。このあたりの切り替えがうまくできるのかがポイントとなるでしょう。