お金を呼ぶ教養塾

物価の動きが分かれば、難しい理論など知らなくても経済を理解できる

経済評論家加谷 珪一

お金と仲良くなったり、投資で成功したりするためには、お金に関する教養を身につける必要があります。本コラムでは何度か指摘していますが、お金に関する教養を求めるあまり、受験勉強をするがごとく知識を詰め込んでしまうのは少々考え物です。お金以外の世界でも同じだと思いますが、教養というのはもっと幅広く、柔らかいものです。

香港のビール代と日本の電気料金から分かること

お金に関する教養として筆者がもっとも重視しているテーマのひとつは「物価」です。物価に対してきちんと対峙(たいじ)できる人は、ほぼ確実に経済の状況を理解できますし、投資でも成功する確率が高いと思います。物価というのはもっとも身近な存在でありながら、一方で非常に奥が深いテーマです。難しいマネー本を読破するのもよいですが、まずは物価について関心を持つことから始めてみるのがよいでしょう。

先日、筆者は仕事で香港に行ったのですが、仕事が終わってビールを1杯飲もうとホテルのバーに行ったところ、ビールが一杯1500円でした。ホテルのバーはそもそも値段が高めですが、それにしても日本の感覚からすると2倍近い水準です。いくつかつまみを加えてしまうと、軽く5000円を超えてしまいます。

ここで物価に関心がない人は、「香港は物価が高い」といった感想を持つだけでおしまいです。

筆者は毎月ではありませんが、定期的に電気代のチェックをしています。電気代は季節や家電の使い方によって変わります。どのくらい上がっているのか直感では分かりにくいので、1キロワットあたりに換算するのですが、単位あたりの電気代は毎年、少しずつ上がっています。

ここでも物価にあまり関心がない人は「電気代が高くて大変だ」で終わってしまうでしょう。ひどい人になると電気代が上がっていることにすら気付かないかもしれません。

しかし、香港のビール代と日本の電気料金には、経済を理解するにあたって非常に重要な情報が含まれています。これを活用できるかどうかは大きな違いといってよいでしょう。

日本ではデフレが進んでいるといわれており、物価が下がっているというイメージがありますが、それは表面的なイメージに過ぎません。日本は貿易で国を成り立たせていますから、実は諸外国の物価から極めて大きな影響を受けているのです。

1杯1500円のビールを飲む人が香港にはたくさんいるわけですから、この事実は香港の経済成長率が高く、賃金も上昇していることを意味しています。ちなみに米国では、大卒の初任給が50万円というのは特別高いという部類には入りません。日本人の賃金はここ10年で相対的にかなり安くなったと考えた方がよいでしょう。

※写真はイメージです。

日本も海外と同様、実はインフレが進んでいる

つまり日本はデフレでも海外はデフレではないということですから、海外からモノを買えば高くなる、ということがこの話から想像できると思います。ここで重要な意味を持ってくるのが電気代です。

日本の発電は、水力、火力、原子力などをミックスした形になっていますが、火力の比率が高く、火力発電の燃料となる石油や天然ガスはすべて外国から輸入しています。つまり電気代というのは海外の物価に大きく左右されるものなのです。

実際、日本の電気代は、デフレなどお構いなしで、ずっと上がりっぱなしです。

電気代は非常に分かりやすいのですが、似たような現象をあちこちで観察することができます。わたしたちが普段、口にしているお菓子やパンなどは小麦粉から出来ており、小麦も多くが輸入です。菓子メーカーやパンメーカーが購入する小麦の値段は年々上がっています。

メーカーにしてみれば原材料価格が上がっているわけですから、最終的な製品価格を上げないと利益が減ってしまいます。しかし値上げをすると商品が売れなくなりますから、メーカーは苦肉の策として、値段を据え置き、内容量を減らすという、いわゆる「ステルス値上げ」を行っています。見かけ上の価格は同じですから、物価が上がったようには見えませんが、これは事実上の値上げといってよいでしょう。

こうしたことが全国各地で行われているわけですが、これは果たしてデフレと呼んでいいのでしょうか。現実にはそうではなく、海外との取引が多い日本は、結局のところ海外の物価から大きく影響を受け、ジワジワとインフレが進んでいるのです。

デフレとインフレでは、株式投資の対象は180度変わってきます。インフレなら不動産銘柄が有利ですし、デフレならファストフード銘柄などが有利になります。しかしインフレとデフレの認識を逆にしてしまうと、投資対象もまったく逆になってしまいます。

インフレかデフレかという難しい議論をしなくても、こうした物価の動きを見ているだけで、おおよそのことは分かりますし、投資する銘柄についても大きく間違うことはありません。これこそがお金に関する教養なのです。

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