
相関関係と因果関係
お金に関する細かい知識やテクニックも大事ですが、それだけでは、お金と縁のある生活を送れるようにはなりません。もっとも重要なのは、物事に対する基本的な考え方です。しっかりとした考え方が身に着いていれば、余計な情報に惑わされることなく、日々の生活を送ることができます。そして、こうした生活習慣が、結果的にお金を引き寄せることになるのです。
人は何か行動する前に、目の前で何が起こっているのか分析して判断するという作業が必要となります。これは仕事でもそうですし、人間関係の構築においても同じことが言えます。適切な分析ができなければ、正しい選択をすることはできません。
何かを分析して判断する際、多くの人が混同しがちなのが、相関関係と因果関係です 。この違いを知っておくだけで、頭の中はかなり整理されてくるでしょう。
相関関係というのは、二つの事柄の間に何らかの関係性があるという意味です。
例えば、お金持ちの人ほど喫煙率が低いというデータがあったとします。つまり、お金を持っていることと、喫煙には何らかの関係性が存在している可能性が高いということになります。
このデータは、喫煙率が低いこととお金を持っていることに関係があることを示しているだけですが、一部の人はこのデータを見て、直感的に「タバコを吸わなければ、お金持ちになれる」と考えてしまいます。しかし、このデータだけでそうした結論を得ることはできません。
タバコを吸わなかったからお金持ちになったのではなく、お金を持つようになった結果、健康に気を使うようになり、タバコを吸わなくなった可能性もあるからです。
これとは逆に、「タバコを吸うこととお金の話は関係ない!」あるいは「タバコを吸っていてもお金持ちの人はいる」と感情的になる人も少なくありません。気持ちは分かりますが、密接な関係性が示されている以上、これを無視するのも正しい判断とはいえないでしょう。

相関関係は、二つの事象に関係があることまでしか示していませんが、タバコを吸わないことで集中力が増し、その結果がお金持ちになったというメカニズムがハッキリした場合には、それは因果関係となります。
物事を分析したり判断したり する時は、単純に相関関係があるだけなのか、因果関係があるのか、しっかりと見極める必要があります。これができないと、人は時にトンデモナイ行動を取ってしまいます。
会社の中には、自分の過去の成功体験を部下に押しつけるタイプの上司がたくさんいます。
その体験によって成功を勝ち取った人がたくさんおり、条件を変えても同じ結果が得られるのであれば、そこには因果関係を見いだすことができます。もし因果関係が立証されているのであれば、部下に押しつけるかどうかは別問題として、同じ行動を勧める意味は出てくるでしょう。
しかし、その体験が自分だけのものであり、それが成功に結びつくという客観的データがない場合には、そこに因果関係は存在していません。こうした話を部下に押しつけても意味がないどころか、逆効果となる可能性もあるわけです。
成功する人は○×をしている、○○な人は××になる、といった話を聞く時には、相関関係と因果関係について意識しながら聞くクセをつけるとよいでしょう。
これがしっかり峻別(しゅんべつ) されていれば、ウソの話にだまされることもなくなりますし、感情的になって反発するようなことも少なくなります。自分にとって有益な情報を選別し、自分に応用することもできるでしょう。
こうした行動の積み重ねが、結果的に自分自身にお金を呼び込む結果となるのです。