
お金を遠ざける思考回路、お教えします
お金に恵まれた生活を送れるかどうかは、物事に対する考え方や日々の行動によって大きく左右されます。お金と友達になりたければ、それ相応の考え方というものが必要になってくるのです。逆に、お金が離れていくばかりの人には、必ず原因があります。それを取り除かなければ、豊かな人生は送れません。
お金を自身から遠ざけてしまう思考回路のひとつに、「キーワード志向」というものがあります。
物事をキーワードで単純化するのは、非常に心地がよいものです。自分が何をすればよいのかハッキリ示された気がしますから、大きな安心材料にもなるでしょう。
キーワードを使って話をシンプルにする効果そのものは、否定しません。一方で、こうした手法には、落とし穴があるものです。キーワードで物事を考えるクセばかり身に付いていると、物事の本質を見失ってしまうのです。本質を理解できないことは、お金にとって大きなマイナスとなってしまいます。
キーワード志向の最大の欠点は、「なぜ」という感覚を失わせてしまうことです。
以前、「鈍感力」というキーワードが流行ったことがありました。大きな成果を出す人は、必ず他人から嫉まれたり、批判されたりするものです。そのような時、周囲の声に煩わされず、自らの道を追求できることは極めて重要な意味を持ちます。こうした能力があることを、「鈍感力」があると表現しているわけです。
鈍感力が重要であるというのは、まったくその通りだと思いますし、状況を的確に表したキーワードだと思います。しかし、このキーワードを無批判に受け入れることは、避けなければなりません。
このキーワードを聞いて、「そうだ。鈍感力を身につければよいのか」と思った人は、要注意です。キーワードで処理してしまった人の多くは、その後も鈍感力を身につけられていない可能性が高いでしょう。
自分が鈍感になれないことには、明確な理由があります。

日本はよく「ムラ社会」といわれます。表面的には近代的なビルが建ち、高速鉄道が走っていますが、前近代的な慣習があちこちに残っており、本当の意味での個人主義は確立していません。このような社会において周囲と異なる行動を取ることにはリスクを伴いますし、実際、大きな批判にさらされることもあります。
しかしながら、周囲の目を気にして、同じような行動ばかり取っていては、経済的に豊かになれるはずがありません。今日の飲み会への支出がムダだと感じたら、きっぱりと断る勇気がなければ、お金は出ていくばかりです。こうした周囲からの同調圧力を乗り越える力が、真の鈍感力ということになるのだと思います。
しかしながら、鈍感力というキーワードにしてしまうと、表現が柔らかくなり、物事の真実を覆い隠してしまう危険性があります。
鈍感力を身につければよいのだと思ったことで満足してしまい、「周囲との軋轢を乗り越える」という本当の試練に到達せずに終わってしまうのです。厳しい言い方をすれば、行動を起こさない言い訳として、「鈍感力を身につける」というキーワードを使ってしまう可能性すらあるといってよいでしょう。
社員力、人間力といったキーワードも同じです。
社員力や人間力という力は、本当は存在しません。これらは皆、具体的なスキルや能力の組み合わせとして成立しています。人間力というものは、創造力、責任感、意欲、忍耐、思いやりといった複数の要素で構成されており、その集大成が人間力と考えるべきです。
人間力を高めるためには、結局のところ、これらの各スキルを地道に向上させていくしかありません。その苦労は並大抵のことではありませんし、こうした地道な努力の重要性は昔から説かれているものです。
ところが、「人間力を身につける」というキーワードで処理してしまうと、あたかも目新しい斬新な解決方法に思えてきます。そして先ほどの鈍感力と同じく、「人間力を身につければよいのか!」と考えて、それで満足してしまうのです。
お金に縁のある人は、決してこうしたキーワードで物事を考えません。なぜそうなっているのだろうと考え、どうすれば状況がよくなるのかを筋道立てて考えます。こうしたクセを付けることが、結果的にお金を自身に引き寄せてくるのです。