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日本でタンス預金が増えている理由

経済評論家加谷 珪一

日本は先進諸外国と比較して、紙幣の流通量が多いといわれています。日本では欧米ほどキャッシュレス決済が進展していないことが主な要因とされていますが、それだけが理由ではありません。日本人は現金をそのまま自宅などで保管する、いわゆるタンス預金が多いという可能性も指摘されています。ではなぜ日本人はタンス預金を好むのでしょうか。

現在、日本国内に流通している紙幣と硬貨の総額は約112兆円となっています。これは、GDP(国内総生産)の約2割に達する規模で、先進諸外国の中では突出して高い数字です。日本ではまだまだ現金が主役ということを意味しますから、キャッシュレス決済が伸びるという予測についても、しばしば、このデータが根拠として用いられます。

確かに欧米各国では昔からクレジットカードが広く普及していたこともあり、街中で現金を見かけるケースは多くありません。100円~200円の買い物でもカードで済ませる人が多いため、財布にお金をたくさん入れている人もやはり少数派です。

特に高額紙幣についてはその傾向が顕著となっており、普通のお店で100ドル札を出すと受け付けてくれないこともあります。100ドル札を何の躊躇もなく受け取るのは、観光客が多い地域の店舗くらいでしょう。

近年、政府がキャッシュレス決済を推奨していることもあり、日本でも電子マネーなどによるキャッシュレス決済が増加しています。2017年度における日本のキャッシュレス決済額は約65兆円ですが、もしキャッシュレス決済が年々増加しているのであれば、現金の流通は減っているはずです。ところが、キャッシュレス決済が増えているにもかかわらず、流通する現金の総額も増えるという現象が発生しています。

明確な理由は分かっていないのですが、その原因はタンス預金にあるというのが一般的な見方です。その理由は、唯一、家計部門だけが現金を増やしているからです。

現金を持っている経済主体ごとの統計を見ると、企業は現金の保有を増やしておらず、現金を増やしているのは主に家計です。電子マネーといったキャッシュレス決済を利用するのは基本的に個人ですから、個人は現金を増やしながら、キャッシュレス決済も行っているという奇妙な図式が成立します。

この矛盾した動きを説明するためには、多くの人がタンス預金を行っていると解釈せざるを得ません。

※写真はイメージです。

現金流通の主役がタンス預金であるというのは流通する紙幣の種類からも推察できます。紙幣として流通しているお金は圧倒的に1万円の枚数が多く、1万円札は1000円札の2倍もあり、紙幣のほとんどが1万円札であるといっても過言ではありません。

「自分の財布には1000円札しかないよ」と思った人も多いと思いますし、皆が日常的に1万円札をバンバン使っているわけではないのですが、統計上は圧倒的に1万円札が多いのです。一昔前は、現金問屋といって現金で買い付けなどを行う企業も少なくありませんでしたが、最近ではめっきり数が減りました。

街中で1万円札を見ないのに、1万円札が増えているというのはやはりタンス預金以外に考えにくい状況です。

しかしながら冷静に考えるとタンス預金ほど非合理的な手段はありません。家に現金を置いておけば、常に盗難のリスクにさらされますし、金利も付きません。現金は物価が上昇するだけで損失になってしまいますから、常に減価する恐怖に怯えていなければなりません。

日本はデフレが続いていると言われていますが、それは物価の上昇率が鈍いことをデフレと呼んでいるだけで、実際に物価が下がっているわけではありません。アベノミクスがスタートして以降、基本的に物価は上昇一辺倒となっており、8年間で物価は6%も上がりました。タンス預金をしていた人は逆に言えば6%損失を抱えたことになります。今後、物価上昇はさらに激しくなる可能性が高いですから、タンス預金をしている人はますます損失が大きくなるでしょう。

ではなぜ、大きな損失を出しているにもかかわらずタンス預金を行うのでしょうか。おそらくその理由は不安心理であると考えられます。

この先、何かよくないことが起きると考えると、現金を手元に置いて安心したいという心理が働きます。また一部の人はインフレの仕組みをよく分かっておらず、物価が上がっている時に現金を持っていると大きな損失になるということについてピンときていないのかもしれません。

確かに億単位の資産を持っている人の場合、銀行のペイオフの対象にもなりませんから、資産の一部を非常時に備えて現金で保有しておくというのはひとつの方法です。しかしながら、一般的な人の場合には、過度なタンス預金は控えた方が賢明でしょう。イザという時に必要な分の一定量の現金を保有していく程度がちょうどよいと思います。

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