お金を呼ぶ教養塾

今の支出を抑制すれば、自動的に老後の生活は安泰になる

経済評論家加谷 珪一

「収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20 年で約1,300 万円、30 年で約2,000 万円の取崩しが必要になる」と指摘した金融庁の報告書が大問題となり、事実上の撤回に追い込まれてしまいました。本当のところ、老後にはどのくらいのお金が必要なのでしょうか。

当たり前のことだが、いくら必要かは人によって違う

報告書で示された2000万円が必要という話の根拠となっているのは、平均的な高齢者世帯の収支動向です。平均的な支出と収入から計算すると、毎月5万円の貯金を取り崩している計算になるというものですが、これはあくまで平均値ですから、2000万円ないと暮らせないという意味ではありません。

雑誌などでは、老後には「○○円必要」といったタイトルの記事をよく目にしますし、筆者も職業柄「いくらあれば老後は安心して暮らせるでしょうか」と質問されることがよくあります。この質問に対する本質的な答えは、現役時代にどれだけコンパクトな生活を実現できたのかによって変わってくる、ということになります。

退職直前に年収が1000万円近くにも達していながら、ほとんど貯金がないという人がいます。こうした人は、自身の収入に対して支出が過大であり、収支のバランスが取れていません。一方、年収が500万円しかなくても、退職時には3000万円以上の貯金を確保している人もいます。

500万円の年収で3000万円を貯金できた人は、生活がコンパクトで、年間の支出も少ないと考えられますから、老後になって年収が大きく下がっても、家計の収支が急激に悪化する可能性は低いでしょう。もしこうした人が年金をもらいながら、さらに仕事を続けたとすれば、何の問題もなく生活できるはずです。

月々の支出が少ない人ほど、老後に必要な貯金の額が少なくなるわけですが、皮肉なことに月々の支出が少ない人は貯金の額も多くなる傾向が顕著です。つまり、貯金する必要性が薄い人ほど、貯金できているという話です。

つまり、老後を安心して暮らすには、いくら必要になるという価値観から脱却し、今のうちからどれだけ生活をコンパクトにできるのか重視することが大事でしょう。

※写真はイメージです。

人生をコンパクトにすればたいていの問題は解決する

支出を減らし、生活をコンパクトにすると聞くと、すぐに節約を思い浮かべると思いますが、1円でも安い食材を買うといった行動には走らないでください。こうした節約方法は、実行するのが大変な割に、思ったほどの効果は得られません。

生活をコンパクトにするには、いわゆる断捨離が有効ですが、捨てる対象はモノではなく、むしろ人間関係などソフト面に着目した方がよいでしょう。その理由はお金の支出というのは、たいていの場合、他人との交友関係にひも付いているからです。

人は「人付き合い」と称して、不要な人との交友をダラダラと継続してしまいがちです。最近では会社で接待するという習慣はかなり減っているようですが、それでも会社関係の飲み会、食事会は少なくありません。もしお酒がそれほど好きでなければ、アルコールが入る会合には一切出ないと決めてしまえば、関連の支出は一切、なくなります。
すべての職場にあてはまるわけではありませんが、お酒が入った付き合いをしないと、本当に仕事に支障が出るというケースはまれですから、その決断をできるかどうかが分かれ道です。

家に知人を呼んで自慢したいという気持ちから、住宅に過剰支出する人もいます。しかしながら、マイホームを使って他人にマウンティングしたところで収入が増えるわけではありませんから、これも割り切り次第ということになるでしょう。子どもの進学についても、どこまでが子どものためなのか、本当は親の見えのためなのか、しっかりと切り分ける必要があります。

さらに細かいところでは、携帯電話にも当てはまります。近年、格安SIMの普及が進んでおり、関連サービスを提供する事業者に乗り換えれば、場合によっては通信費を半分以下にすることも不可能ではありません。しかし、既存の通信契約を変更するのが面倒であるという理由だけでなく、格安の通信サービスを使うのは、格好悪いといった理由で変更を躊躇(ちゅうちょ)する人もいるようです。

格安SIMを提供している事業者は様々ですが、使っている回線そのものは、NTTドコモやKDDIなど大手通信会社が提供したものですから、品質に大きな差があるわけではありません。こうした「気分」によって支出が増えているのは非常にもったいないことです。

老後の生活が心配なのであれば、いくらお金が必要なのか考えるのではなく、まずは今の生活をどれだけコンパクトにできるのかに集中しましょう。今の生活がコンパクトになれば、収支に余裕が出てくるので貯蓄も進みますし、何より老後になって生活水準を落とさずに済みます。現実の老後の収支については、生活をコンパクトにしてから考えた方が合理的です。

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