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肉食系でないと豊かになれないの?

経済評論家加谷 珪一

草食系タイプと肉食系タイプを比較するとどちらがお金持ちになりやすいでしょうか。こう聞かれると、多くの人が「肉食系」と答えるのではないかと思います。しかしながら、なぜ肉食系の方が、お金持ちになりやすいのかという話になると、根拠がかなり怪しくなってきます。

経済活動というのは実は非合理的なもの

肉食系の方がお金持ちになりやすいというのは、肉食系の人の方が、何となくアグレッシブなイメージがあるからかもしれませんが、ガッツがあればお金持ちになれるほど世の中は単純ではありません。もしそうなら、スポーツが得意な人は皆、お金持ちでしょう。

ただ、ビジネスや投資の世界では、リスクを取らなければ利益は得られないという絶対的な法則があります。リスクと聞くと、多くの人は危険なことと捉える傾向が顕著ですが、ビジネスや投資の世界におけるリスクというのは少し意味が違います。

ここで言うところのリスクというのは、不確実性のことを指します。この先、どうなるのかはっきりしていない状態でも、ある程度、覚悟を決めて、決断することを「リスクを取る」と表現しているわけです。果敢にリスクを取ることができる人を肉食系とするなら、確かにこうした人には結果的に多くのお金が集まってきます。

偉大な経済学者であるジョン・メイナード・ケインズも、有名な『雇用・利子および貨幣の一般理論』の中で、「アニマル・スピリット」という言葉を使って、同じような概念について言及しています。アニマル・スピリットは、直訳すれば動物的な精神ということになりますが、一般的に「血気」「野心」などと訳されます。

経済活動というのはすべてが合理的に行われているわけではありません。時には合理主義では理解できないような、冒険的行為をする人がいることによって、経済は発展していきます。

もし人々が全員、ガチガチの合理主義者で利益だけを念頭に行動しているのであれば、この世の中にはベンチャービジネスなど生まれていないでしょう。
起業家というのは、うまくいくのかまったく保証がない中で、誰もやっていないことに果敢に挑むわけですが、普通に考えれば、こうした行動は非合理的で意味がありません。儲(もう)けが小さくても、確実に利益になることをコツコツとやった方が圧倒的に得だからです。

しかし起業家はこうした目の前の利益には目もくれず、一種の使命感で新しい事業に邁進(まいしん)します。多くは失敗に終わるのですが、不思議なことに、その中のいくつかは、画期的なビジネスとして成長し、世の中を一変させ、経済を成長させる原動力となるのです。

ケインズは、こうした行動を動物にたとえて「アニマルスピリットと呼んだのですが、こうした野心を動物に例えるというのは少し不自然な気もします。なぜなら動物は普通、こうした行動は取らないからです。

※写真はイメージです。

動物と人間との大きな違いは何か?

動物を詳しく観察するとよく分かると思いますが、動物ほど合理的で、リスクを取らない生き物はいません。

シマウマはライオンが近づいてくると襲われないよう一斉に逃げますが、仲間の誰かがライオンに捕まってしまうと、一気に平常モードになり、再びのんびりと草を食べ始めます。
シマウマは、ライオンは満腹の時には絶対にシマウマを襲わないことを知っていますから、言葉は悪いですが、仲間のシマウマが食べられている時が、もっとも安心できる時間帯なわけです。

猫も同じです。猫はエサをくれそうな人が現れると、まさに猫なで声を出して甘えてきますが、そこに別の猫が現れると、突如、すさまじい形相になり、「ギャー」と大きな声を出して相手を追い払います。そしてライバルの猫がいなくなると、何事もなかったかのように猫なで声に戻り人に甘えます。

つまり動物というのは徹底的に利益に対して合理的であり、野心のカケラもありません。仲間がライオンに食べられたシマウマが、負けると分かっていながら、仲間のためにライオンに突進することはないのです。

ケインズがこの言葉を使うよりもずっと前から、様々な学問分野で、生存本能という意味で動物を引き合いに出すケースが多く、ケインズはこうした経緯も踏まえて、あえて「野心」という概念にアニマル・スピリットをあてたのかもしれません。

少し話が長くなりましたが、程度の違いはともかく、何らかの「野心」がある人がお金の面で有利なのは間違いありません。同じ貯金をするという行為でも、漫然とお金を貯めることと、まとまった軍資金を作って、株式投資をしようという心構えで貯金をするのとでは、当然、その結果には大きな差がついてきます。

無理に危険を冒す必要もありませんし、肉食系の人物になる必要もありませんが、何事に対してもちょっとした「野心」を持ち続けることは極めて重要です。野心という言葉が少しスッキリしなければ、「気概」や「意義」といった言葉に置き換えてもよいでしょう。

単純な事務作業ひとつとっても、気概を持って取り組む人や、そこに意義を見いだす人は、そこから必ず何かを学び取ることができ、最終的にはすべて利益につながっていきます。これこそが人と動物を分ける最大の違いなのです。

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