お金を呼ぶ教養塾

消費してよいお金とダメなお金の違い

経済評論家加谷 珪一

お金に色はないとよく言われますが、実際はそうでもありません。同じ100万円でも、消費してよい100万円と消費してはいけない100万円の2種類が存在します。お金に関する教養が身に着いている人はこの違いをしっかりと区別することができます。

では消費してよい100万円と消費してはダメな100万円は何が違うのでしょうか。多くの人は、自分の収入以上に消費したり、収入の全部を消費に回してしまったりしてはいけないと考えたのではないかと思います。この話はまさにその通りで、借金をして消費したり、貯蓄や投資にお金を回したりしないというのは言語道断です。

しかし筆者が考える「消費してよいお金」の意味は少し違います。お金の教養を突き詰めていくと、消費してよいお金の定義はさらに狭くなります。つまり、収入の範囲で生活するという考え方では不十分なのです。

多くの人は、借金して稼ぎ以上の消費をしているのでなければ、稼いだお金の中から消費することは悪いことではないと考えていると思います。筆者も昔はそう考えていました。しかし、お金に関する教養が身に着くと、考え方は大きく変わってくることになります。

この話を聞くと少し驚くかもしれませんが、お金持ちの人にとって、稼いだお金をそのまま消費する行為は、借金してお金を消費することと大差がない行為なのです。つまり、年収600万円の人が600万円消費していてはダメなのです。年収600万円の人が500万円だけ消費して、残りは貯金するという話であっても結果は同じです。

この話は、本コラムでも触れたストックとフローという概念と密接に関係しています。

お金持ちの人にとって、毎年の稼ぎ(フロー)というものは、原則、消費してはいけないお金です。働いて得たフローというのは、基本的にストックを作るための原資であり、本来は手をつけるべきお金ではないのです。

※写真はイメージです。

もちろん現実の生活を考えると、年収が低い段階では、稼いだお金から生活費を捻出する以外に方法はありませんから、結果としてフローとして得たお金の中から消費するという行動にならざるを得ません。しかし、これはやむを得ない選択であり、本来、そうであってはいけないという認識を持つことが大事なのです。

ではお金持ちにとって「消費してよいお金」はどのようなお金なのでしょうか。

それは、フローの結果としてストックが増え、そのストックが運用され、結果として生み出されたフローだけが消費してよいお金ということになります。つまり、稼いだお金が蓄積され、それが再び富を生み出す段階になって、初めて消費の対象となるわけです。この段階まで到達して、ようやくちゅうちょせず、生み出されたフローすべてを消費に回すことが可能となります。

例えば1億円というまとまったお金があると仮定しましょう。1億円を3%で運用できれば年間300万円の収入となります。課税分の20%を差し引くと240万円が残ることになるわけですが、これこそが、一切の制約なく消費できるお金です。ブランド物を買おうが、飲み食いしようがあなたの自由です。なぜなら、この範囲での消費なら、このお金を生み出す原資である1億円は一切減ることがないからです。

もちろん1億円をためることは容易ではありませんが、1000万円ならまったく不可能な話ではありません。1000万円が3%で運用できれば年間30万円の収入です。この範囲ならいくら使っても、元の1000万円は減らず、毎年、その収入が続くことになります。

こうした状況を作り出すことができた人とできなかった人とでは、人生の豊かさが天と地ほど異なります。まとまったお金ができるまで支出を抑制することができるかどうかは、まさにお金の教養の有無にかかっています。

お金持ちの中には、散財を繰り返して、結局、無一文になってしまう人がいるのですが、このような人は、瞬間的にたくさんのお金を持つことはできたものの、お金の教養を身に着けることができなかったのだと考えられます。

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