
どんぶり勘定の方がお金持ちになりやすい?
お金に縁のある人生を送るためには、お金に対して、ある程度シビアに接する必要があります。しかし、お金に対してシビアになることと、お金に対して過剰に細かくなることはまったくの別問題です。この違いを理解できるかどうかは、お金に関する教養の有無に深く関わってきます。
筆者はお金に関しては、細かく管理するよりも、むしろどんぶり勘定の方がよいと思っています。実際、お金の使い方が上手な人は大抵がどんぶり勘定です。
お金を貯(た)めるためには、家計簿を付けることが大事と言われます。もちろん家計簿をしっかり付けることができれば、それに越したことはないでしょう。しかし、手段が目的になってしまっては元も子もありません。家計簿を付ける最大の目的は支出を管理することです。
しかし本当の意味で、支出を管理するためには、自分にはどのくらい収入があって、どのような用途にいくら使っているのか、常に把握している必要があります。大事なのは、収入や税金、食費や光熱費、交際費が、だいたいいくらなのかについて全体像を認識していることです。何の費用が何百何十何円というところまで覚えておく必要はまったくありません。
家計簿を付けている人によくありがちなのが、家計簿を付けることに全精力を使い果たしてしまい、何にいくらかかっているのかという、おおまかな数字が頭に入っていないというケースです。これでは支出の管理ができないことは明白でしょう。
お金の管理がしっかりできている人は、自分の可処分所得は? 税金はいくら? 光熱費はいくら? 保険にいくら支出している? といった質問に対して、おおよその数字ですぐに答えることができます。筆者がどんぶり勘定でよいと言っているのはそういう意味です。
おおまかな支出と収入が、頭に入っていれば、自分はどこでムダ遣いをしているのか、すぐに自覚することができます。またそれに対してどのような対策をしたらよいのかも、たちどころに理解できるでしょう。

実際、こうした管理を行ってみるとはっきり分かると思いますが、1000円以下の安い買い物でいくら節約をしても、全体の支出にはほとんど効果がありません。同じ1割の費用を節約するという場合でも、1万円の1割と、10万円の1割では絶対金額が1ケタ違ってきます。しかし、お金の全体像が頭に入っていないと、1000円を1割削減することに血道を上げてしまい、10万円を削ることに思いが至らなくなってしまう可能性があるのです。
一般的に家計の支出の中で大きな割合を占めているのは、住居、自動車、保険の三つです。逆に言えば、この三つのうちどれかを思い切ってコストダウンしない限り、大きな効果は望めません。極論かもしれませんが、家計簿を付ける意味というのは、この三つをコントロールするしかない、ということを理解するためなのです。
お金の節約をするにあたってクレジットカードはよくないといわれますが、筆者はむしろ逆ではないかと考えています。その理由は、カード会社が自動的に家計簿を作成してくれるからです。
クレジットカード会社は、利用者に対して定期的に利用明細を送ってくれます。最近はWebのサービスも発達していますから、リアルタイムに近いタイミングで支出を把握することも可能でしょう。たいていの会社がエクセルなどの形式でデータをダウンロードできるようにしていますから、後で検索したり、並べ替えるといった作業も自由自在です。
支出の多くをクレジットカードに集約すれば、カード会社がタダで詳細な家計簿を付けてくれるようなものです。しかもカードの中にはポイントが付くものもありますから、タダどころか、むしろお金がもらえてしまいます。お金がもらえて家計簿も付けてくれるわけですから、これを利用しない手はありません。
このところ金融機関や事業会社各社が、社会のキャッシュレス化を目指して、QRコードを使った決済サービスの提供に乗り出しています。電子決済が増えるとお金を使ってしまうと警戒する人もいるかもしれませんが、そうではありません。電子決済が増えれば、日々のちょっとした買い物まですべての履歴を管理できるようになります。後で明細をチェックすれば、自分のムダ遣いは立ちどころに把握できるでしょう。
こうした合理的な考え方ができるかどうかで、お金をめぐる状況は変わってきます。これを理解するための「知恵」こそが、お金に関する教養なのです。