お金を呼ぶ教養塾

フェイスブックの仮想通貨から考える、そもそもお金って何?

経済評論家加谷 珪一

米フェイスブックの仮想通貨「リブラ」が話題となっています。各国の通貨当局が一斉に懸念を表明していますから、順調にサービスを開始できるのかについては何とも言えない状況です。仮想通貨の代表であるビットコインは誕生から10年が経過しました。今回はそもそも通貨とは何か?というお話をしたいと思います。

政府が管理していないと通貨ではないという話はウソ

政府が発行したり、管理したりしていないと通貨ではないと思っている人も多いのですが、それは必ずしも正しい認識とはいえません。歴史上、政府が発行・管理していない通貨はいくらでもありましたし、現在でも香港ドルのように民間銀行が発行する通貨というものも存在します。

通貨には、大きく分けて2つの機能があります。ひとつは資産を保全するための機能で、もうひとつは決済する機能です。多くの人は、貯金をしていると思いますが、これは明らかに資産の保全を目的として通貨を保有しているということになります。

決済については説明するまでもないと思いますが、通貨がなければ、買い物は物々交換になってしまいますから、わたしたちは、日々決済をするために通貨を用いています。

では、なぜ、ドルや日本円といった通貨は通貨として利用されているのでしょうか。その理由は、ただひとつ、多くの人が価値があると信用しているからです。

皆が価値があると信じているから価値があるというのは、少々、危うげな根拠に思えますが、通貨というのは本来、そういうものです。かつて各国の通貨制度が金本位制だった時代がありますが、これは各国政府が金を保有し、それを裏付けに通貨を発行するという仕組みです。

金本位制は金の裏付けがあるという点では、担保がない制度に比べて信頼度が高いというイメージがありますが、では、なぜ金に価値があるのかということになると、話は微妙になってきます。確かに金の一部は、宝飾品や工業用途に使われていますが、世界の通貨制度を維持するだけの価値がこうしたニーズから生まれていると解釈するには無理があります。

やはり、金についても、多くの人が価値があると思い込んでいることが価値の源泉であるという側面があることは否定できないでしょう。

通貨が持っている、少々、危うい特徴について考えた時、身近な存在で、もっとも信頼できるのは政府であるというのは、多くの人にとって共通認識だと思います。政府であれば、よほどのことがない限り、破綻(はたん)することはないので、結果的に法定通貨(政府が発行もしくは管理する通貨)が、通貨としてのスタンダードになっているという話であって、政府が発行しないと通貨ではない、ということではありません。

※写真はイメージです。

通貨制度について議論するよいきっかけに

では、ビットコインやリブラといった仮想通貨について、わたしたちはどう位置付ければよいのでしょうか。先ほどから説明しているように、政府が発行していないと通貨ではないというのは誤りですから、多くの人が通貨としての価値があると認めれば、ビットコインもリブラも通貨になれる可能性があります。

ビットコインには裏付けとなる資産がありませんから、現在の米ドルや日本円と同様、信用のみが担保になっている通貨です。一方、リブラは米ドルやユーロなどの資産を担保にして通貨を発行する計画ですから、香港ドルのような存在になる可能性が高いと考えられます。ビットコインと比較すると、多くの人から信用を得やすい仕組みといってよいでしょう。

ビットコインは価格が常に乱高下していますが、その理由は、ビットコインの本質的な価値がいくらなのか、市場が完全に判断できていないからです。その点についても、リブラは米ドルやユーロとリンクすることで価格変動が抑制される仕組みですから、本質的な価値を判断しやすいと考えられます。

しかしながら、リブラがホンモノの通貨として世界に流通するようになるのかは現時点では何とも言えません。各国政府が極めて強い警戒感を示しており、フェイスブックは各国政府と交渉する必要があるからです。

いくらリブラが通貨として価値のある仕組みだったとしても、各国政府が法律で使用を禁じてしまえば、リブラを流通させることはできません。では、なぜ各国は、民間企業1社が提供する仮想通貨にこれほどまでの警戒感を示しているのでしょうか。それは、政府が持っている通貨発行権という、とてつもない利権をリブラが奪ってしまう可能性があるからです。

政府もしくは中央銀行は通貨を一元管理し、銀行を通じて、その流通量をコントロールすることで経済圏を支配しています(量的緩和策などはまさにその典型です)。政府が銀行を通じて経済を支配する中央銀行の制度には、政府が管理しているという安心感がある一方、政治に左右されやすく恣意(しい)的な政策が行われているとの批判も出ています。一部の経済学者が、通貨の管理は政府から完全に独立させるべきだと主張しているのはこうした理由からです。

こうした通貨管理の一部をリブラが担うということになった場合、政府が持つ絶大な利権の一部が失われてしまいますから、当局としては非常に困った事態となります。

これまで通貨の管理をどうすべきかという議論はあまり活発ではありませんでした。筆者は、リブラやビットコインといった仮想通貨への投資を特別に推奨する立場ではありませんが、リブラの登場は、通貨制度に関する本質的な議論を始めるよいきっかけになると思っています。

お金を呼ぶ教養塾

住宅ローンは繰り上げ返済しない方がよい理由

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

日本人の資産額が相対的に減っている?

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

トイレットペーパーの買い占めとお金に対する感性

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

日本でタンス預金が増えている理由

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

お金と仲良くなれる「歴史」の教養とは

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

「お願い力」の高い人が経済的にうまくいく理由

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

本当のお金持ちは、お金を持っていることを他人には見せびらかさない?

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

これからはお金が要らない時代がやってくる?

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

不安は「知る」ことで解消される

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

正確に間違うよりも、漠然と正しい人でありたい

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

肉食系でないと豊かになれないの?

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

お金と仲良くなるには固定観念から自由になる必要がある

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

富は人から奪うもの?それとも創造するもの?

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

物価の動きが分かれば、難しい理論など知らなくても経済を理解できる

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

前を向くか、後ろを向くか

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

子どもに対して積極的に投資教育をした方がよい?

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

「金」への投資にはどんな意味があるの?

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

人はいつ死ぬのか予想できない

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

フェイスブックの仮想通貨から考える、そもそもお金って何?

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

どの銘柄に投資すればよいのか分からないという悩みは実は存在しない

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

今の支出を抑制すれば、自動的に老後の生活は安泰になる

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

ITに詳しくなくてもIT的な考え方だけは身につけた方がよい理由

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

帰納法と演繹法を駆使するとお金が寄ってくる

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

何でも無料で手に入る時代だからこそ、お金を持つことの意味を考えた方がよい

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

お金に関する正反対の話をどう捉えればよいのか?

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

人は変われるのか?

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

女性芸能人と企業経営者の交際に対して世間が冷たい理由

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

なぜお金持ちは「友人を選べ」と諭すのか?

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

社会学を知れば、資産形成のヒントが得られる

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

世の中に「オイシイ話」は転がっているのか?

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

他人へのプレゼントにはお金をかけた方がよい理由

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

豊かになりたければ「怒り」を否定してはいけない

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

会食にかかるお金についてどう考えるか

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

決断が速いことはなぜ重要なのか

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

お金のセンスをトレーニングするもっとも効率的な方法は?

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

お金と見た目の関係

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

割り勘よりおごりの方がよい理由

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

ありがとうと言える人はお金持ちになれるという話は本当?

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

高いモノは良いモノか?

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

どんぶり勘定の方がお金持ちになりやすい?

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

お金はお金のあるところに寄ってくるという話は本当?

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

お金はまとまっていると意味がある

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

自分の一生と冷静に向き合ってみよう

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

お金持ちになれる趣味の持ち方とは

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

お金は天下の回り物

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

物事の是非と損得勘定をしっかり切り分ける

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

相関関係と因果関係

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

「そのうち」は永遠にやってこない

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

率と絶対値の違いをマスターする

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

「数字」はお金の教養そのもの

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

今現在、1年後、5年後、10年後を同時に考え、30年後は考えない

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

金利の意味を知ればお金が寄ってくる

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

お金持ちはお金持ちになってお金持ちになる

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

時間には値札が付いており、その値段は刻々と変わる

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

お金持ちほどお金を使わなくなる話のホント・ウソ

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

消費してよいお金とダメなお金の違い

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

学歴とお金は関係あるの?

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

理解と共感の違いを理解できると、自身の経済力は飛躍的に高まる

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

お金を遠ざける思考回路、お教えします

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

経済的自由を得ることの意味

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

お金が貯まらないのは、承認欲求が強すぎるから

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

幸せはお金で買えるのか?

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

年収1000万円では「お金持ちの生活」を送れない

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

お金に縁のある「教養人」は、徹底して資産額を重視する

経済評論家加谷 珪一
  • 投資
お金を呼ぶ教養塾

お金に縁のある人は、常に相手の目線で物事を考える人

経済評論家加谷 珪一
  • 投資

あなたにおススメの記事

pagetop