
今の金価格はバブルなのか?
2020年以降、金価格の上昇が顕著となっています。本コラムでは以前、金について取り上げたことがありますが、最近の価格高騰があまりにも激しいので、再度、金について取り上げてみたいと思います。
金価格は2020年に入って上昇基調を強め、新型コロナウイルスの感染拡大が本格化した3月以降、上昇スピードが加速しています。金価格はロンドン市場での取引が世界基準となっていますが、ロンドンでの現物価格は1トロイオンスあたり1800ドルを超え、約9年ぶりの高値となりました。その後、金価格は調整に入っていますが、大きくは値下がりしていません。
金は市場の不安心理が高まると買われるという傾向がありますから、コロナ危機による不安感から金を買う人が増えていると考えられます。しかしながら金は意外とリスクが高い商品ですから、単純な不安心理だけで安易に手を出すのは危険です。もし金に対する投資を検討しているのであれば、金の価格が何で決まるのかをよく知っておく必要があるでしょう。
金は様々な要因で価格が変動すると思われていますが、実はそうでもありません。長期的な金価格の推移を調べると、基本的に金価格を決める要因はひとつしかありません。それはインフレ(物価上昇)の度合いです。
金価格には、通貨の価値が下がる(つまりインフレになる)と上昇し、通貨の価値が上がる(デフレになる)と下落するという明確な特徴が見られます。通貨の価値は国によって異なりますが、現代の基軸通貨はドルですから、基本的にドルの価値が下がると金価格が上がり、ドルの価値が上がると金価格が下がります。
戦後、金価格が異常に高騰したのは1980年と2011年の2回だけです。1970年代後半から米国は深刻なスタグフレーション(不景気であるにもかかわらず物価が上昇すること)に悩まされ、それに伴って金価格も上昇し、1980年にピークとなりました。その後、インフレが収まったことから金価格は暴落しました。
2011年の高騰は、リーマンショックが発生し、その対策として大量の資金供給が行われるとの見方(結果的にマネーのバラマキは量的緩和策という形で実施されました)が台頭したことが主な要因でした。しかし、米国の景気がすぐに回復し、ドルに対する信認が復活したことから、価格はやはり下落に転じています。
そして、今回、9年ぶりに再び金価格が上昇することになったわけです。
歴史を見れば分かるように、金価格はインフレが懸念されると上昇するわけですから、今回もインフレ懸念が背景にあると考えるのが自然です。問題は市場にインフレ懸念が発生している理由ですが、これはコロナ対策による国債の大増発である可能性が高いでしょう。
コロナ危機によって各国の経済は大打撃を受けており、失業したり、休業を余儀なくされたりした人を支援するため、日本を含む各国政府は莫大な財政支援を行っています。こうした財政支援の原資はほぼ全額が国債ですから、今後、各国の財政が悪化するのはほぼ確実です。財政が悪化すると、金利の上昇とインフレを招くというのは経済学の常識ですから、物価が上がる(つまり通貨の信認が低下する)と考えた投資家がリスクを回避するため金を買っているのです。
物価が上昇している局面において、現金や預金を持っていることは自殺行為です。通常は不動産や株式などインフレに強い商品に投資をするのがよいのですが、コロナ危機による不景気で不動産や株式も大きく値上がりするとは限りません。その結果、金に投資が集中しているものと思われます。
もし、今後、日本の財政が危機的な状況になる可能性が高いと思っているのであれば、金を買うメリットはあると思います。筆者自身は日本の財政は非常に厳しいと考えており、資産の一部は金で保有しています。しかし、国内では日本の財政はまったく問題ないと考える人も多く、このあたりの見解は人によって異なります。もし、日本の財政は万全であると考えるのなら、インフレの可能性は非常に低いですから、金に投資する理由はゼロといってよいでしょう。
もし、財政問題を気にしているのであれば金は有力な投資先となりますが、金は意外とリスクが高い商品ですから、十分な注意が必要です。先ほどから説明しているように、金価格はインフレ懸念が高まると急上昇しますが、その懸念が消滅するとあっという間に暴落するという特徴があります。
また金は保有しているだけでコストがかかるやっかいな商品であり、金をベースにした投資信託などに投資した場合、何もしなくても年々、その価格は下がっていきます。暴落や、年々価値が低下するリスクを引き受けてでもインフレから資産を守りたいと考えるのであれば、金への投資には意味があるでしょう。
しかし、何となく不安というレベルであったり、株式や債券など基本的な投資を実践していない人がいきなり金に投資したりするというのはリスクが高すぎますから、あまりお勧めできません。何事も同じですが、リスクの高い投資というのは、余裕資金の範囲で、しかもある程度経験を積んでから取り組むべきものといえます。












































































