
お金持ちはお金持ちになってお金持ちになる
「お金持ちはお金持ちになってお金持ちになる」。これは誰かエライ人が言った格言ではなく、筆者が考えた警句です。自分ではよく出来ていると思っています。くだらない自慢はこのくらいにして、「お金持ちになってお金持ちになる」というのはどういうことなのか説明していきます。
一般的に用いられている「地位は人を作る」という言葉に似ているかもしれません。組織の中ではこれまで、あまりぱっとしないと思われていた人でも、社長などの重要ポストに就くとやがて社長らしくなり、リーダーシップを発揮するようになるケースがよく見られます。
責任ある立場になると考え方や立ち居振る舞いが変わり、結果としてその地位にふさわしい人間に成長できる可能性があります。これを「地位は人を作る」と表現しているわけです。
哲学の世界には「観念論」対「唯物論」という議論があります。人の精神というのはもともと決まっているものなのか、周辺の環境によって形作られるものなのか、という論争です。結論の出ない神学論争のようなものですが、わたしたちの日常的な行動を考えると、両方の面を持っていることは明らかでしょう。
例えば、家族や恋人への愛情というのは、おそらく教育されて身に付いたのではなく、人間が最初から持っているものですから観念論的です。同様に、人のものを盗んではいけないというルールも、法律以前に存在する「人としてのモラル」に起因する可能性が高いですから、やはり観念論的でしょう。
一方、「地位は人を作る」という言葉は、周囲の環境によって人の精神が形成されるということですから、こちらは唯物論的になります。先ほど、愛情は観念論的だと説明しましたが、人は置かれた立場によって愛情の形を変える可能性もありますから、周囲の環境からすべて独立しているわけではありません。
ここで大事なのは、どちらが絶対的に正しいかではなく、こうした二面性が人間には存在しているということです。
冒頭に紹介した「お金持ちはお金持ちになってお金持ちになる」という言葉は、お金持ち特有の思考回路や立ち居振る舞いは、お金持ちになるとさらに強固なものになっていくと考えればよいでしょう。

世の中では、お金持ちの人ほど、さらにお金持ちになりやすいとよく言われます。これは投資などで有利になるという現実的な側面もあるのですが、考え方や立ち居振る舞いといったメンタルな部分も大きく影響しているはずです。
逆に考えれば、お金持ちでなくても、お金持ちの人たちの行動様式や思考回路を積極的に身に着けるようにすれば、「お金と仲良くなれる」可能性が高まります。その意味で、お金持ちの人たちが言っていることには積極的に耳を傾けた方がよいと、筆者は考えています。
もちろんお金持ちの中には、世間の注目を集めるために突拍子もないことを言う人や、自分の自慢話ばかりをする人もいます。しかしお金持ちの人たちのごく普通の発言の中に、自分にはピンと来ないというものや、そんなこと当たり前だろうと思えることがあったら、それは大チャンスです。
そこにはお金に縁のある生活を送るためのヒントが詰まっている可能性があります。
例えばですが、ほとんどのお金持ちの人は、「お金の手離れがよくない人はお金持ちになれない」と証言しています。多くの人が語っているなら、それは真実に近いと考えてよいでしょう。何でもない話に聞こえますが、こうしたところに重要なヒントが隠されています。
この話は、散財すればよいというものでは決してありません。しかし、小さなお金にあまりにもこだわり過ぎていると、大きなチャンスがやって来た時、思い切ってそのお金を使うことができません。ケチケチしすぎてはいけないというのは、そういった意味です。
これに加えて、ほとんどのお金持ちの人が、軍資金の大切さを説いています。つまり何かを実現するためには、ある程度まとまったお金が必要ということです。貯金は大事だということになりますが、貯金が目的になってはいけません。貯金が目的になってしまうと、イザという時に、その資金を投じることにためらいが生じてしまうからです。
お金持ちになってお金持ちになるという言葉は、決してお金持ちのためだけに向けられたものではないのです。