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年収1000万円では「お金持ちの生活」を送れない

経済評論家加谷 珪一

前回のコラムでは、お金に関する「教養」がある人は、年収(フロー)ではなく資産額(ストック)を強く意識しているという話をしました。ストックに対する意識が薄い、つまりお金に関する教養が乏しいと、人は時としてとんでもない浪費をしてしまいます。1000万円の年収がありながら、貯金ゼロでギリギリの生活をしている人や、多額の退職金をもらったはずなのにその多くを使い果たしてしまう人は、その典型といってよいでしょう。

「プチ・セレブ的」な支出に走りかねない年収1000万円

年収1000万円というのは、本当のお金持ちから見ると、実は微妙な立ち位置です。日本人の平均年収が400万円台という時代ですから、多くの人から見れば年収1000万円は超リッチかもしれません。しかし、この年収では、いわゆる「お金持ちの生活」を満喫することはできません。食べるものや着るものが多少は良くなるかもしれませんが、生活が根本的に変わるわけではないのです。

ところが困ったことに、本人たちはそう思っていない可能性があります。自分たちは高収入なので、リッチな生活を送っても大丈夫だ、と考える人が少なくないのです。しかし現実に使える金額には限度がありますから、結果的に彼らはいわゆる「プチ・セレブ的」な支出に走ってしまいます。

せっかく稼いだフローを、すぐに使ってしまう生活です。支出が給料の範囲で収まっているなら、何とかなるようにも思えます。ところが、ここには「税金」という大きな落とし穴が待ち受けているのです。

税金にもいろいろな種類があるのですが、まず思い浮かぶ税金といえばやはり所得税でしょう。所得税というのは、給料の額、つまりフローに対して課される税金です。日本は累進課税となっており、年収が上がるほど税率が高くなってきます。つまり年収が倍になったからといって、可処分所得も2倍になるわけでなく、稼いだ金額に対して現実に使えるお金の割合は減ってくるのです。

しかし給料が2倍になると、ついつい気持ちも2倍になり、ひどい場合には3倍くらいに膨れあがってしまいます。一方、税金の額は多くなり、手元に残る金額は期待よりも減っていきます。太っ腹な気分で支出を続ければ、自転車操業まっしぐらです。せっかく貯めた貯蓄を取り崩すようになり、気がつくと資産額がゼロになってしまう危険性もあります。

※写真はイメージです。

亡くなるタイミングを逆算してお金を使う

せっかくもらった退職金を、一気に使い果たしてしまう人の心理も同じです。前回のコラムでも解説しましたが、まとまった資産があると、それを運用して毎年いくらかの収入を何もせずに得ることが可能となります。1億円の資産があって3%で運用できれば、毎年300万円が、3000万円の資産があれば100万円が手に入るのです。資産が減ることなく、毎年、それが収益を生み出してくれるのです。

この仕組みを理解した人は、まとまったお金に手を付けることは決してしません。

ニュースなどで、1億円ものお金を持っているにもかかわらず、地味な暮らしのまま亡くなってしまう人の話が取り上げられることがあります。多くの人は「お金は墓場までは持っていけないのに」「使わないとお金は意味がないでしょ」と考え、お金を持ったまま亡くなってしまう人のことを不思議に思うわけですが、残念ながらその人はストックに対する意識がまだまだ足りません。

確かに、お金を余らせて亡くなってしまうのは、もったいないことかもしれません。でも、お金の教養がある人にとっては、まとまったお金というのは利益を生み出す工場のような存在です。工場のオーナーが、工場の設備や資材を切り売りしてよいわけがありません。

おそらく、こうした大金を残して亡くなった人は、持っている資金を運用して得たお金については、何の躊躇もなく消費しているはずです。しかし、そのお金を生み出す元になる資産を取り崩すという発想は持っていないのです。

人はいつ亡くなるか分かりません。来年かもしれませんし、老人になってもさらに20年以上生きる可能性もあります。お金に関する教養がある人は、亡くなるタイミングを逆算してお金を散財するなどということはしないのです。

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