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コロナ後、持ち家と賃貸は
どう考えればよいのか?

経済評論家加谷 珪一

このところ住宅市場に異変が起きています。新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛によって住宅販売は壊滅的な状況ですが、首都圏のマンション販売価格は上昇しています。テレワークへの移行によって郊外への転居が増えることで、都市部の家賃低下が期待されましたが、賃料も値上がりしている状況です。
持ち家か、賃貸かというのは誰にとっても大きな悩みであり、どちらを選択するのかで個人の経済状況も大きく変わってきます。住宅に対する支出は人生の中でもかなり大きな部類に入りますから、コロナ危機によって、住宅市場にどんな変化が起こっているのか知っておいて損はないでしょう。

新型コロナウイルスの感染拡大は、外食や小売りなど顧客と直接やり取りする業界を中心に大きな影響を及ぼしています。マンションや戸建て住宅の販売も、基本的に顧客がモデルルームや現地に足を運ぶ必要がありますから、感染拡大が深刻化するにつれて客数の激減に見舞われました。

2020年5月における首都圏のマンション販売戸数は前年同月比で80%以上のマイナスとなり、まさに壊滅的といってよい状況でした。ところが、売れ行きがこれほど悪化しているにもかかわらず、販売価格は前年同月比で6%以上も上昇しているのです。販売の悪化を察知したデベロッパー側が売りやすい高級物件に絞った影響もありますが、一部では価格が暴落するとまで言われていたことを考えると、驚くべき状況といってよいでしょう。結局、2020年を通じて価格は下がらず首都圏の新築平均販売価格は6000万円に達しています。

価格が下がっていないのには、マンションの建設コストが年々上昇しており、値引きしたくても出来ないという懐事情も関係していますが、比較的価格の高い物件を中心に、思ったほど住宅に対する引き合いが減っていないのが最大の理由です。

今回の感染拡大では多くの企業がテレワークを実施しましたが、富士通やカルビーのように、在宅勤務を恒常的な制度として位置付け、今後は、必要な時以外には会社に行かなくても良い体制に切り替えるところも出てきています。すべてが在宅勤務になるわけではないでしょうが、テレワークというのは、もはやコロナが蔓延している時だけの一時的な措置とは言えなくなっています。

そうなると、今後も家で仕事をする機会が増えますから、どうしても住宅の環境に関心が集まります。お金に余裕がある人の中には、今、住んでいる住宅を売却し、仕事のスペースを確保できる広い物件を探し始めている人もおり、条件を満たす物件はそれなりに販売が進んでいるようです。

※写真はイメージです。

もちろん売れにくくなっている物件もあるのですが、近年はマンション・デベロッパーの大手寡占が進んでおり、販売側にはまだ余力があります。大手デベロッパーは、すぐには損切りをせず、市況が復活するまでの間、在庫として抱えるため大幅な値引きにはつながりにくいのです。

マンション価格があまり下がらず、広い家に住みたいと考える人が増えると、当然、賃貸住宅市場も同じような状況になります。広めの物件を中心に、このところ家賃を上げる大家さんが増えており、首都圏の平均家賃は上昇が続いている状況です。

もっとも、コロナ危機の影響によって職を失ったり、年収が下がる人が増えてきますから、全体としては不動産価格には下落圧力がかかることになります。しかしながら、仕事をめぐる環境が大きく変わったことで、広い住宅へのニーズは逆に高まっており、場合によってはこうした動きが下落圧力を相殺することになるかもしれません。

では、今後、住宅についてはどう考えればよいのでしょうか。

一部では、今後、通勤の頻度が減ることから、郊外や田舎の広い家への住み替えを検討している人もいるようですが、筆者は少し様子を見た方がよいと思っています。

確かにテレワークが定着すれば、職場にできるだけ近い場所に無理に住む必要はなくなるでしょう。しかしテレワークが普及するということはオフィスの一部が不要になるということも意味しています。不要となったオフィスビルの跡地には、かなりの確率でマンションが建設されますから、今後は都市部の優良な場所に、安価なマンションが大量供給されることになります。

こうした物件は、価格は下げずに広さを確保する可能性が高いですから、絶対値は安くならないかもしれませんが、今までより広い物件が同じ価格で手に入ることを意味しています。テレワークといっても、まったく出社しなくてもよいわけではありませんし、これからは生涯労働時代ですから、高齢になってから別の職場で働く可能性もあります。便利な場所に家があることの魅力は捨てがたいでしょう。

今は市場が混乱気味ですから、様々な動きが出てきますが、1~2年の間に状況はそれなりに安定してくると思われます。その間に、今後のライフスタイルや資金計画などをしっかり練り直し、住宅の支出はどうするのかじっくり検討するのがよいと思います。

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