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人は変われるのか?

経済評論家加谷 珪一

経済的に豊かになるためには、変化に対して柔軟に対応することが必要と言われます。しかし、変化にすぐに対応できる人と、そうでない人がいます。そもそも人というのは簡単に変われるものなのでしょうか。

哲学の世界でも重要なテーマになっている

人は、学習や経験で変わることができるのか、それとも、生まれ持った性格や価値観を変えることはできないのかという問題は、ずっと論争の的となってきました。

単純な知識や学力であれば、人によって差はありますが、学習という行為を積み重ねることで、ある程度の能力向上が期待できます。しかし、基本的な性格や価値観というものは、そう簡単に変えられるものではありません。どんなに説得しても、理解してもらえなかったという経験は誰にでもあると思います。

一方で人は、周囲の環境でいとも簡単に性格を変えることがあります。お金はその最たるもので、お金を持った途端、人格が変わってしまったというのは、あちこちで耳にする話です。

これは、哲学の世界でも重要なテーマとなっており、唯物論と観念論(あるいは唯心論)という大きな対立軸が存在します。つまり、人間の世界というものが、精神によって形づくられているのか、物質によって形づくられているのかという論争です。

観念論の立場では、精神が人の振る舞いを決めると考えます。観念論においては、仕事でよい成果を得ようと思ったら、まずは何としても達成するという強い意志が重要となります。現在、置かれている環境はあまり影響しないとの立場ですから、観念論というのは「人はそう簡単には変わらない」という価値観とみてよいでしょう。

一方の唯物論では、先に物質的環境があり、その影響で精神が形作られると考えます。

唯物論の立場に立てば、貧しい生活を経験した人は、経済的に成功したいという気持ちが強くなるといった因果関係が成立することになります。つまり自分が置かれた環境が精神を生み出すと考えるわけです。言い換えれば、人は環境によっていくらでも変われるということになります。

観念論を代表する考え方が、ギリシャの哲学者プラトンが提唱したイデア論です。人は猫を見ると猫と認識しますが、別の猫を見ても猫と認識します。そして、目の前にいる猫が現実にすべていなくなってしまっても、猫という概念は残ります。つまり、現実に存在する猫の上位概念として猫という存在があるとプラトンは考えました。

重要なのは、物質よりも精神が上位にあるという点です。プラトンはこれを猫のイデアと呼びました。このほか観念論を提唱した哲学者としてはカントなどが有名です。

※写真はイメージです。

両方の面をうまく使い分けられる人が成功する

一方、唯物論ではマルクスがよく知られています。マルクスは理想とする社会を実現するため、多くの人を同じ環境に置くことが重要と考えましたが、それが最終的に社会主義的な政治体制へとつながっていきました。

哲学の世界では、精神が先なのか、環境が先なのかについて延々と議論が行われていますが、私たち一般人にとって、こうした哲学的な議論はあまり意味をなさないでしょう。大事なのは、人には両方の顔があると理解することです。

観念論では、先に精神がありますから、絶対的な価値観というものが存在すると考えます。ビジネスの世界には、正しいビジネスとは何かという基本的な理念が存在するはずであり、それは誰にとっても共通ということになります。観念論の人は、正しい価値観に基づいて決めた行動は、どんな状況でもそれを貫くべきと考えるはずです。

一方、唯物論的な人は、ビジネスに対する価値観や仕事の進め方は、周囲の状況によって簡単に変わってしまうと考えます。どんなに立派な考えの持ち主でも、食うに困る状況になれば、不正を働くかもしれません。逆に成功して豊かになると、気持ちが変化して、振る舞いも変わってくることになります。

現実社会における人の振る舞いを見ると、観念論的な部分と唯物的な部分の両方を持っていることが分かります。しかも経済的に成功できる人は、両者をうまく使い分けています。

二つの概念をうまく経済的な成功に結び付けるためには、自分の行動を振り返り、どのケースで、どちらの考え方に立脚していたのか分析してみるとよいでしょう。
観念論が行きすぎていると感じたら、環境を変えてみるのがよいかもしれません。一方、唯物的で環境に左右されていると思ったら、逆に理念を重視した方がよいでしょう。このバランスを上手に取れる人こそが、最終的な勝者になれるのです。

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