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お金で幸せは買えない?

経済評論家加谷 珪一

日本人は諸外国の人よりも、お金がないと幸福感を感じられないという調査結果が話題となっています。「お金で幸せは買えない」というのは、当たり前の常識ですが、人はなぜお金に振り回されてしまうのでしょうか。

国際的に事業を展開する金融機関の調査によると、「幸せは経済状況に左右されない」と回答した日本人の比率は調査対象主要国(5カ国)の中で突出して低い値でした。日本人はお金がないと幸福感を感じにくいということですが、実はこの結果は国際比較調査に詳しい人の間では特に驚くような話ではありません。日本人はお金と幸福感を結び付ける傾向が強いという調査結果は他にもあるからです。

当たり前のことですが、お金を使って直接、幸せを買うことはできません。お金があるにもかかわらず不幸だという人は多いですから、わざわざ議論するまでの話でもないでしょう。一方で、お金がないと不幸になりやすいという話はよく耳にします。

文豪トルストイの名作「アンナ・カレーニナ」には、「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はそれぞれに不幸である。」という有名な一節があります。ここではお金の話には一切、触れられていませんが、不幸な家庭は千差万別であるということは、不幸になる要素がたくさんあることの裏返しと考えられます。

お金がなかったことで不幸になるという話は現実に存在しますから、その意味では、お金があれば不幸を軽減する効果は得られそうです。

※写真はイメージです。

例えば、会社の体質がブラックで、精神的に追い詰められた時、ある程度、お金に余裕があれば、次の仕事のメドが立っていなくても、会社を辞める決断をしやすいでしょう。しかし経済的な制約があると、生活費がなくなる恐怖から、すぐに行動できなくなる可能性は十分にあります。

この問題は、最終的には満足度の高い仕事を見つけられるのかという部分に左右されますから、仕事をやめたところで根本的な解決にはなりません。しかしながら、メンタルをやられながらズルズルと会社にいることと、すぐに会社をやめて次の仕事を探すことを比較した場合、精神衛生上、後者の方が良いことは明らかです。

人は「幸福であること」と「不幸ではないこと」について特に区別することなく考えていますから、「お金がないと幸せではない」と感じてしまう可能性は否定できません。「幸せは経済状況に左右されない」と考えた日本人が極端に少なかったのは、お金で幸福を買おうとしているのではなく、人生の選択肢が少なく息苦しさを感じており、それが転じて「お金があればもっと自由なのに」と感じた結果と考えられます。

もしそうだとすると、お金の問題というのは、お金だけの話ではなく、どれだけ自由な人生を送れるのかというライフスタイルの話であると言い換えることができるでしょう。

例えば、営業が得意で、どんな会社に行ってもある程度の成果を上げられるという自信があれば、会社の人間関係にはそれほど悩む必要はありません。仮に今いる会社の雰囲気が悪くなれば、転職すれば済む話ですし、新しい会社でもそれなりの数字を出せるはずです。

つまりこのビジネスパーソンは、自由度が高い生活を送っており、仮に今いる会社での年収がそれほど高くなくても、不幸だとは感じにくいはずです。一方で、著名企業に入って高い年収をもらっていても、自分のスキルに自信がなければ、どんなに会社の雰囲気が嫌でも会社にしがみつくしかありません。このような人は、当然ですが、年収が高くても幸福感を感じることはできません。

筆者はサラリーマン時代に1度転職し、その後、起業を経験し、さらに仕事を変えて今に至っています。同じ会社にいるよりも転職する方がリスクが高いですし、サラリーマンよりも起業家の方がさらにリスクが高くなりますが、不思議なことに、後になるほど気持ちがラクになっていきました。その理由は、継続的な投資の成果で資金的に余裕が出来てきたことと、経験を積むにつれて、自分のスキルに対して自信がついてきたからです。

結局のところ、どれだけ自由度があるのかで気持ちが大きく変わってくるという話ですから、お金というのは、その手助けをする存在に過ぎません。

幸福感と自由度が密接に関係しているのだとすると、正しいお金の使い方というものも、ある程度、見えてくるのではないでしょうか。

自由度を高めることができると幸福感が増すのであれば、お金は人生の自由度を高めるために使うのがベストということになります。同じ100万円でも、単なる消費に支出するのではなく、スキルアップの学費に充当すれば、最終的には精神的な安定をもたらすことになります。投資も同じで、お金が増えていけば何かあっても、一時的に対処する余力が増えますから、これも大きな効果を発揮するでしょう。

スキルアップのための支出は自己研鑽が目的ですから、これも投資の一種ということになります。お金と仲良くなるためには消費ではなく投資が大事だとよく言われますが、その理由は、投資というものは、人に自由をもたらし、最終的には人生の満足感につながっていくものだからです。

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