お金を呼ぶ教養塾

何でも無料で手に入る時代だからこそ、お金を持つことの意味を考えた方がよい

経済評論家加谷 珪一

このコラムでは何回か言及していますが、お金をたくさん持ったからといって幸せになれるわけではありません。幸福とお金には基本的に何の関係もないからです。しかしITが発達し、多くの無料サービスが登場している現代社会においては、お金を払ったことへの対価について、少し考え直す必要がありそうです。

多くのコンテンツが無料で利用できるが・・・

インターネットから得られる情報の多くは無料となっています。しかしタダより高いものはないという言葉がある通り、無料コンテンツといっても見えない形で対価を支払っています。具体的には自分の時間です。自分は見たい情報だけしかクリックしないので関係ないと思う人もいると思いますが、実際はそうでもありません。

ネットの広告が閲覧される確率は一定割合で決まっていますから、ページの閲覧数が多ければ多いほど、広告のクリック数が増加します。そうなってくるとサイトの運営者はできるだけ多くの閲覧数が得られるよう、コンテンツを選別するようになります。

これはテレビなど無料で見られるすべてのサービスに共通することですが、どうしても大多数の人が好むコンテンツに内容が集中する傾向が顕著となります。見る人はあまり多くないものの、特定の人は見たいというコンテンツの優先順位は下がらざるを得ません。

そうなってくると、自分が欲しい情報に到達するためには、結構な手間をかける必要が出てくるため、ネットを閲覧する総時間が増えていきます。時間というのは貴重な財産ですから、知らず知らずのうちに見えない形で時間というリソースを消費しているわけです。

対価の有無は選択肢の幅にもつながってきます。

無料のサービスを使っていれば、お金を出すことなく欲しいサービスが得られるので便利ですが、場合によっては利用者の選択肢が狭まっている可能性があります。一方、ある程度のお金を払えば、利用者はもっと柔軟にサービスの内容を選ぶことができるでしょう。

これまでの時代は、どのサービスも基本的な内容は同じであり、お金を出せば出すほど、その内容が高品質あるいは高級になるという仕組みでした。しかしネットが発達した現代社会では、お金を出すことは、選択肢を広げ、より自由に行動するための対価というニュアンスが強くなってきます。

かつての時代においても、この話はある程度までなら当てはまっていましたが、今後はその傾向がより顕著になってくるでしょう。贅沢(ぜいたく)をしたいから使うというよりも、自身の選択肢を広げるためにお金を支出するという考え方を持った方が賢い支出ができるはずです。

※写真はイメージです。

何を得て、何を失っているのか

これからの時代は、ひとつの会社に入って、定年まで働き、その後は年金で暮らすという昭和型のライフスタイルが崩れ、生涯、何らかの形で仕事を続ける人が増えてくると考えられます。こうした時代には、常に学習を続け、スキルアップすることが重要となるでしょう。

スキルアップのためには何らかの自己投資が必要ですが、どこに自分のお金を投じるべきなのか、お金の使い方にも戦略性が求められるようになるのです。

戦略的な思考を身につけるのは簡単ではありませんが、日々のトレーニングで学習することができます。

先ほど、無料コンテンツと有料コンテンツの違いについて説明しましたが、どの情報にどれだけお金を出すことができるのか、あるいは、無料だった場合に、自分は何を失っているのかを考えるという作業は、まさに戦略性を磨く絶好のトレーニングといってよいでしょう。

こうした思考回路が身に付くと、仕事やプライベートでの人付き合いもよりスムーズになります。人付き合いに何を求めているのか、人付き合いによって何を得て、何を失っているのかが分かれば、優先順位も付けやすくなるはずです。

タクシーに乗る時にも、何にお金を出していて、乗らなかった場合に何を失っているのかを理解できれば、利用するかどうかの判断基準は明快になるでしょう。無料サービスが増えている今の時代だからこそ、お金の使い方が問われているのです。

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