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副業時代到来。経済的なピンチについてどう考えるか?

経済評論家加谷 珪一

毎月、給料日前になるとお財布がピンチになる人がいます。この話は「お金がピンチだ」といってもそれほどシリアスなものではありませんが、事業を立ち上げた人など、資金面で本当に深刻な状況に陥る人もいます。こちらは、これは文字通りの大ピンチといってよいでしょう。

世の中には「ピンチをチャンスに変える」などという言葉がありますが、本当に深刻な事態を経験した人にとっては、あまり説得力のある言葉ではありません。本当にピンチに陥った時には、チャンスに変えるなどと暢気なことを言う余裕はありません。結果的に大ピンチだった人が、形勢逆転に成功することはありますが、それはピンチにも冷静に対処し、その後に訪れたチャンスをしっかりと生かすことができたからです。

これからの時代は副業が当たり前になりますし、退職後にビジネスを始める人も増えてくるでしょう。自営業者として仕事をすれば、それは立派な実業家であり、規模は小さくても相応のリスクを引き受けなければなりません。大事なお金をなくさないようにするためには、できるだけピンチとなる状況を作らないようにする必要がありますし、仮にピンチに陥っても対処できる知識を身につけておくことが重要です。

ビジネスを始めるにあたって、もっとも大事なポイントのひとつは、最初にいくらの初期投資がかかるのかです。これは業種によって様々で、飲食店のように1000万円単位の資金が必要となるビジネスもあれば、ネットを使って、初期投資ゼロでビジネスを始める人もいます。

ここで知っておくべきなのは、初期投資が多いからといって、利益が出やすいとは限らないということです。多額の初期投資が必要であるにもかかわらず低収益というビジネスもありますし、初期投資がゼロで高収益というビジネスも存在します。

※写真はイメージです。

利益と初期投資が無関係であれば、初期投資が大きいビジネスには誰も参入しないはずですが、現実はそうでもありません。その理由は、(儲かるかどうかはともかく)初期投資が大きいビジネスは、お金さえ用意できれば、参入しやすいというケースが多いからです。典型的なのは先ほど例にあげた飲食店です。

いつの時代にも脱サラで飲食店を始める人が大勢います。飲食店は日常生活に馴染みがありますから、新しくビジネスを始める人にとっては敷居が低く感じられるようです。貯金に加え、親類などからお金を借りて飲食店をスタートする人はかなりの数にのぼるでしょう。

しかしながら、参入しやすいことと、ビジネスで儲かることはまったく別の話ですから、ライバルとの競争に打ち勝ち、長く存続できるお店はそれほど多くありません。もし自己資金のみで店を出したのであれば、失敗してもそのお金がなくなるだけですが、借金をしている場合には話は変わってきます。店を閉めても借金が残ってしまうと、次の仕事を探すにしても、まずは借金の返済が最優先となってしまいます。

筆者は自身が起業した経験がありますし、サラリーマン時代には金融機関に在籍していたこともありますから、ビジネスでの失敗例をたくさん見てきました。事業の失敗でが、再起不能の事態を引き起こす原因のほとんどは借金です。つまり、事業で失敗すること自体は、実はそれほどのマイナスにはならないのです。

事業で失敗しても、それが自己資金の範囲であれば、すぐに新しいビジネスを立ち上げることも不可能ではありません。ところが借金でがんじがらめになっていると、そうした自由がなくなります。事業に失敗した後に、大きなチャンスが到来したものの、借金が原因でそのチャンスを生かせなかったというケースは山のようにあります。

借金は場合によっては大きな力になるケースもあるのですが、副業や退職後のビジネスでは、基本的に借金は御法度と考えた方がよいと思います。そうなってくると、必然的に新しく立ち上げるビジネスは初期投資が少なくて済むものから選択した方がよいとの結論になるでしょう。

従来の飲食店は初期投資がかかるものでしたが、コロナ危機をきっかけに店舗を持たないデリバリー専業の飲食店が急ピッチで増えてきました。ウーバーイーツなどのデリバリーサイトに出店するのであれば、初期投資は厨房設備だけですから、最小限の投資で済みます。工夫次第では、飲食店であっても初期投資を抑えることができますから、副業希望者にとっては喜ばしい話です。

次は不幸にもピンチに陥ってしまってからの話です。

ビジネスがうまくいなかった場合、取引先への支払いなどを清算し、そのビジネスから撤退しなければなりません。手持ちの資金ですべて対処できれば、何の問題もありませんが、そうでない場合には、破産などの手続きに追い込まれることもあります。

個人事業の場合、個人の生活と事業の重複がありますから、破産してしまうと、いろいろと面倒なことになります。一方、法人を設立していれば、ある程度までなら個人の資産と会社の資産を分けることができるので、一連の問題がスムーズに処理できることがあります。

ただし、借金をしたり、オフィスや店舗を借りる場合には、法人名義であっても代表者が連帯保証に入るケースがほとんどですから、個人と法人を完全に切り分けることはできません。

いずれにせよ、失敗した時にはどのような手続きが必要となるのかは、関連書籍などに詳しく書いてありますから、ビジネスを始める前にしっかり読み込んでおいた方がよいと思います。ビジネスを始める前から失敗した時のことを想定するなど縁起が悪いと感じる人がいるかもしれませんが、これこそが大ピンチを回避する最良の方法なのです。

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