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日本人の資産額が相対的に減っている?

経済評論家加谷 珪一

お金持ちと聞くと、多くの人が年収が多いことをイメージしますが、高年収の人が、必ずしも多額の資産を保有しているとは限りません。なぜなら、資産というのは自ら増えていくものであり、資産そのものを上手に増やすことができないと、大きな資産額にはならないからです。

昨年、日本人の資産が相対的に減少しているという衝撃的なレポートが発表されましたが、これは資産そのものを増やさないと、大きな資産は作れないという現実を如実に示しています。

スイスの金融大手クレディ・スイスが行った調査によると、2019年における日本人の1人あたりの資産額は約23万8100ドル(約2620万円)でしたが、2000年との比較でわずか24%しか増えていませんでした。一方、諸外国における1人あたりの資産は近年、急拡大しています。

米国人の資産額は2000年には約21万ドルと日本人よりも1割程度多いだけでしたが、2019年には43万ドルと2倍以上に拡大しました。フランスやドイツ、英国なども資産額が2倍から3倍に拡大しており、主要国で資産が増えていないのは何と日本だけというのが現実です。

新興国になると、さらにその違いは顕著となります。

シンガポールは、同じ期間で資産額を3倍弱に増やしており、すでに日本を追い越しています。韓国も約3倍となり、日本とほぼ同レベルまで接近しています。香港に至っては48万9258ドルと日本よりも圧倒的に資産額が多くなりました。

こうした諸外国と日本でなぜここまでの差がついているのでしょうか。

お金にはストックとフローという区別がありますが、個人に当てはめれば、フローというのは毎年稼ぐ年収ということになります。国家の場合はGDP(国内総生産)ということになるでしょう。一方、ストックというのは、フローの結果として蓄積された資産のことを指します。個人であれば貯蓄が該当するでしょう。

※写真はイメージです。

資産の額を増やすためには、消費を抑制して、毎年、多くの金額を貯金すればよいわけですが、それだけで資産額が決まるのであれば、年収が多ければ多いほど資産額も多くなるはずです。国に当てはめるとGDPが多ければ多いほど、資産額が増えるという話ですが、それだけでは2~3倍という違いは発生しません。

日本の資産がほとんど増えていないにもかかわらず、諸外国の資産が2~3倍に増えたのは、諸外国の稼ぎが拡大したことに加え、資産価格も上昇したことが要因です。

具体的には株式市場や不動産市場の動向ということになるでしょう。

日本の住宅は30年から50年で建て替えられるものが多いため、資産にはなりにくいという欠点があります。しかし、欧米では築100年の住宅でも、ごく普通に売買されており、メンテナンスさえしっかりしていれば、築年数が古いことはマイナス要因になりません。

諸外国では、条件のよい場所にある住宅価格は上昇するのが一般的ですから、自己保有した住宅は、純粋に住むためのものだけでなく、国民にとっての重要な資産形成手段となっているのです。

諸外国は経済が堅調だったこともあり、各国の不動産価格は過去20年で1.5倍から3倍に上昇しました。一方、日本では不動産の価格は同じ期間でむしろ下がっており、個人の資産形成にはマイナスになっています。同様に日本の株価もあまり上昇しませんでしたから、日本人の資産はなかなか増えず、諸外国と日本との間で、これだけの大差がついてしまいました。

この現実は、資産というものは、それ自体の価値を上げる工夫をしないと増えていかないものだということを示しています。いくらがんばって貯金をしても、貯金のまま遊ばせておけば、資産額は貯金の分しか増えません。無理にリスクを取る必要はありませんが、何らかの形で価値が増える資産に振り向けなければ、相対的には負けてしまうということがお分かりいただけると思います。

日本では住宅が資産になりにくいという面がありますから、住宅を購入する際には、資産価値が維持されるのかについて真剣に検討する必要があるでしょう。いつ売っても買い手が付くような物件でなければ、資産としては機能しにくいのです。

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