
格差社会を乗り切る方策は投資にあり
2020年初頭に開催された世界経済フォーラム(通称ダボス会議)において、国際支援団体のオックスファム・インターナショナルが「世界の億万長者2153人の富は貧困層46億人の財産を上回る」という報告書を発表したことが、大きな話題となりました。世界中で格差が拡大しているという話なのですが、私たちはこの話題について、どう受け止めればよいのでのしょうか。
同団体が指摘するように、近年、全世界で格差が拡大しているのは事実なのですが、その内実を知ると少々、複雑な気持ちになる人が多いと思います。
格差拡大には実は2つの種類があります。ひとつは、貧困者が増えるといった形で格差が拡大する「下方向への格差」で、もうひとつは、貧困者は減っているものの、お金持ちがさらにお金持ちになって格差が拡大するという「上方向への格差」です。
前者の格差は不景気の時に発生しやすく、後者の格差は好景気の時に発生しやすいという特徴があります。
ここ20年、日本を除く世界各国は驚異的な経済成長を実現しており、お金持ちがますますお金持ちになるという現象が生じています。景気が良くなっていますから、低所得層や中間層の人の年収や資産も増えているのですが、それ以上に高額所得者が大金を手にしたり、投資した株や不動産が値上がりするので格差が拡大していきます。

一方、日本だけは例外で過去20年間、不景気が続いてきました。不景気になると、高額商品がパッタリと売れなくなることからも分かるように、高額所得者の年収が激減します。次いで中間層、低所得者層の生活水準も下がってしまい、一部の人は極端に生活が苦しくなります。今の日本はまさにそのような状態であり、下方向への格差が拡大しているのです。
つまり景気がよいとお金持ちはますますお金持ちになり、景気が悪いとお金持ちの人の資産も減りますが、生活が苦しい人が続出する結果となります。多くの人にとってあまり気分のよい話ではありませんが、これが格差に関する真実であり、お金と真剣に付き合いたいのであれば、この真実についてしっかりと受け止める必要があるでしょう。
不景気が続くと、生活が苦しくなる人が増えますから、やはり景気は拡大している方がいいに決まっています。しかし、景気が拡大していくと、お金持ちの人はますますお金持ちになってしまい、結果的に格差が拡大します。メンタルが強い人は、「景気がよい時は、皆が去年より良くなるのだから、さらにお金持ちになった人のことを気にする必要はない」と主張していますが、人間というのはどうしても他人が気になってしまうものです。
そうなると格差社会をうまく生き抜くためには、景気がよい時をうまく利用して、富裕層との格差が広がらないよう工夫する必要が出てきます。
お金持ち人は毎年稼いだ額を貯金してさらにお金持ちになっているのかというとそうではありません。お金持ちの人がさらにお金持ちになる理由は、稼いだお金の多くを株式や不動産に投資し、その株式や不動産が好景気で値上がりすることで資産額を増やしています。
逆に言えば、金額の絶対値は小さくても、しっかり投資をしていれば、富裕層との格差が一方的に拡大するということはありません。東京都の港区は全国でもっとも平均所得が高い自治体のひとつとして知られていますが、港区民の所得には他の自治体とは異なる明確な特徴があります。それは株式や不動産からの収益比率が極めて高いことです。
諸外国と比較すると、日本の場合、年収を何億円も稼ぐ超高額所得者というのはかなり少なく、どの自治体でも平均所得にそれほど大きな違いはありません。しかし最終的な所得には大きな差がついており、その多くは投資から得られる収益で占められているのです。
もちろん投資にはリスクがありますから、むやみに投資を推奨するつもりはありません。しかしながら、資産形成の王道が投資であることも事実であり、経済的に豊かな人生を送りたいと考えるのであれば、投資とまったく無縁というわけにはいかないでしょう。
これは経済法則の宿命ですから、誰にとっても平等ですし、逆に言うと、誰もこの法則から逃れることはできません。リスクをコントロールしながら、投資を続けていくことこそが、格差社会を乗り切る最大の方策なのです。